March 20, 1997 Vol. 336 No. 12
左冠状動脈前下降枝近位部の単独狭窄に対する冠動脈ステント移植と血管形成術の比較
A COMPARISON OF CORONARY-ARTERY STENTING WITH ANGIOPLASTY FOR ISOLATED STENOSIS OF THE PROXIMAL LEFT ANTERIOR DESCENDING CORONARY ARTERY
F. VERSACI AND OTHERS
無作為試験により,冠動脈狭窄の初回治療として冠動脈ステント移植を使用すれば,標準的な冠動脈血管形成術より再狭窄のリスクが低下することが示された.われわれは,左冠状動脈前下降枝近位部の単独狭窄患者を選択し,これら二つのアプローチの有効性を前向きに検討した.
左冠状動脈前下降枝近位部の単独狭窄患者 120 人を無作為割付けして,ステント移植または標準的な冠動脈血管形成術を行った.主要臨床エンドポイントは,12 ヵ月の時点での手術成功率(残存狭窄 50%未満で,死亡,心筋梗塞,入院中の冠動脈バイパス手術の必要性がないことと定義)と,無イベント生存率(死亡,心筋梗塞,狭心症再発がないことと定義)とした.血管造影上のエンドポイントは手術後 12 ヵ月での再狭窄率であった.
二つの治療群は,人口統計学的特性,臨床特性,血管造影上の特性に関して有意差はなかった.手術成功率は 2 群の患者で同程度であった(ステント移植群 95% 対 血管形成群 93%,p=0.98).12 ヵ月無イベント生存率は,ステント移植後では 87%,血管形成術後では 70%であった(p=0.04).再狭窄率は,ステント移植後では 19%,血管形成術後では 40%であった(p=0.02).
症状のある左冠状動脈前下降枝近位部の単独狭窄患者では,ステント移植は,再狭窄率が低いことと臨床転帰が良好なことから,標準的な冠動脈血管形成術より優れている.