October 30, 1997 Vol. 337 No. 18
血漿有機塩素濃度と乳癌のリスク
PLASMA ORGANOCHLORINE LEVELS AND THE RISK OF BREAST CANCER
D.J. HUNTER AND OTHERS
殺虫剤や産業化学物質中の有機塩素などの「環境エストロゲン」への曝露は,乳癌発生率の増加の原因とされてきた.いくつかの試験により,乳癌患者では対照者より 1,1-ジクロロ-2,2-ビス(p-クロロフェニル)エチレン(DDE)およびポリ塩化ビフェニル(PCB)の血中濃度が高いことが報告されている.
1989 年または 1990 年に血液サンプルを提供し,その後 1992 年 6 月 1 日までに乳癌と診断された女性 240 人の DDE と PCB の血漿中濃度をプロスペクティブに測定した.これらの値を,乳癌を発症しなかったマッチした対照女性の測定値と比較した.DDE に関するデータは 236 組について入手でき,PCB に関するデータは 230 組について入手できた.
DDE の濃度の中央値は,症例患者では対照患者より低く(4.71 ppb 対 5.35 ppb,p=0.14),PCB の濃度の中央値についても同様であった(4.49 ppb 対 4.68 ppb,p=0.72).曝露が最高五分位の女性の乳癌の多変量相対リスクは,最低五分位の女性と比較して,DDE に関して 0.72(95%信頼区間,0.37~1.40),PCB に関して 0.66(95%信頼区間,0.32~1.37)であった.DDE および PCB の双方への高濃度曝露は,乳癌リスクを低下させたが,これは有意でなかった(DDE と PCB の双方への曝露が最高五分位の女性の,最低五分位の女性と比較した相対リスク,0.43;95%信頼区間,0.13~1.44).
2,2-ビス(p-クロロフェニル)-1,1,1-トリクロロエタン(DDT)および PCB への曝露は乳癌のリスクを増加させるという仮説を,われわれのデータは支持しない.