November 20, 1997 Vol. 337 No. 21
体外血液加温で処置した偶発性深部低体温症と循環停止の生存者の転帰
OUTCOME OF SURVIVORS OF ACCIDENTAL DEEP HYPOTHERMIA AND CIRCULATORY ARREST TREATED WITH EXTRACORPOREAL BLOOD WARMING
B.H. WALPOTH AND OTHERS
心肺バイパスは,偶発性深部低体温症の患者を再加温するために用いられてきた.その他の再加温法とは異なり,心肺バイパスは,循環が不十分な患者の臓器灌流をただちに回復する.この試験では,偶発性深部低体温症を伴う循環停止患者を心肺バイパスによって再加温し,生存例における長期転帰を評価した.
循環停止を伴う深部低体温症(中心体温,<28℃)は,偶発性低体温症患者 234 人中 46 人に認められた.この 46 人のうち,32 人に心肺バイパスによる再加温が試みられ,その結果 15 人が長期生存した.これらの患者の大部分は,登山中の事故または自殺企図後に深部低体温症に陥った.平均追跡期間 6.7±4.0 年(±SD)の後,患者の診療録を入手し,神経学的検査・神経心理学検査,神経血管超音波検査,脳波検査,脳磁気共鳴画像(MRI)検査を実施した.
患者の平均年齢は 25.2±9.9 歳であった;女性 7 人,男性 8 人であった.患者が発見されてから心肺バイパスによる再加温までの平均時間は 141±50 分(範囲,30~240)であった.追跡調査の時点で,QOL が損なわれるような低体温症関連後遺症は認められなかった.加温後初期に認められた神経学的障害・神経心理学的障害は,完全に,またはほぼ完全に消失した.1 人に MRI 上で脳萎縮が認められ,軽度の臨床徴候を伴っていたが,これは低体温症によって引き起こされた可能性がある.その他の臨床異常は,すでに存在したか,または低体温症に関連しない損傷によるものであった.
この臨床経験は,若年の,それまで健康であった人々が偶発性深部低体温症に陥った場合,たとえ循環停止時間が長くなっても,脳障害をきたすことなく,またきたしても最小で生存することができることを証明している.心肺バイパスは,有効な再加温法であると思われる.