February 3, 2000 Vol. 342 No. 5
急性発症と糖尿病関連抗体陰性を特徴とする 1 型糖尿病の新しい亜型
A Novel Subtype of Type 1 Diabetes Mellitus Characterized by a Rapid Onset and an Absence of Diabetes-Related Antibodies
A. IMAGAWA, T. HANAFUSA, J. MIYAGAWA, AND Y. MATSUZAWA
現在,1 型糖尿病は,自己免疫性(1A 型)と特発性(1B 型)に分類されているが,特発性についてはほとんどわかっていない.
そこでわれわれは,1 型糖尿病を有する日本人成人の連続症例 56 例を,グルタミン酸脱炭酸酵素(GAD)抗体(この抗体の存在は自己免疫の一つの指標である)の有無によって分類し,臨床的,血清学的,および病理学的な特徴を比較,検討した.
患者は以下の 3 群に分類された:GAD 抗体陽性の 36 例,GAD 抗体陰性かつ糖化ヘモグロビン 11.5%以上の 9 例,GAD 抗体陰性かつ糖化ヘモグロビン 8.5%未満の 11 例.最初の 2 群と比較して,3 群目では高血糖症状を呈した期間が短く(平均 4.0 日),糖化ヘモグロビン値が低いにもかかわらず血糖値が高値(平均 773 mg/dL [43 mmol/L])であり,尿中 C ペプチドが低下しており,代謝異常(ケトアシドーシスを伴った)が高度で,血中膵酵素が上昇しており,膵島細胞抗体,IA-2 抗体,インスリン自己抗体が陰性であった.GAD 抗体陰性かつ糖化ヘモグロビンが低値であった患者 3 例の生検膵組織の免疫組織学的検討では,膵外分泌組織に T リンパ球の浸潤を認めたが,膵島炎,急性あるいは慢性膵炎の所見は認められなかった.
特発性 1 型糖尿病患者のなかには,膵島炎を認めず,糖尿病関連自己抗体陰性,非常に急激な発症,および血中膵酵素の上昇を特徴とする非自己免疫性劇症 1 型糖尿病患者が存在する.