ある血液透析センターで発生したエポエチン α の汚染による Serratia liquefaciens 血液感染症
Serratia liquefaciens Bloodstream Infections from Contamination of Epoetin Alfa at a Hemodialysis Center
L.A. GROHSKOPF AND OTHERS
1 ヵ月間に,血液透析センターの外来患者において 10 件の Serratia liquefaciens の菌血症と 6 件の発熱性反応が発生した.
センターの職員が S. liquefaciens の菌血症や発熱性反応を報告した日に実施されたすべての血液透析治療を対象として,コホート研究を実施した.透析の手順を再調査し,水,医薬品,石鹸,ハンドローションから採取した試料と,職員の手から採取したスワブの培養を行った.
48 例の患者の 208 透析治療を解析した.12 透析治療に S. liquefaciens 菌血症が発生し,8 透析治療で菌血症を伴わない発熱性反応が発生していた.感染症または発熱性反応が発生した透析治療では,これらが発生しなかった 188 透析治療よりもエポエチン α の投与量の中央値が大きく(6,500 U 対 4,000 U,p = 0.03),朝番の勤務時間帯よりも昼番あるいは夜番の勤務時間帯の透析治療が多かった(p = 0.03).さらに,この感染症や反応が発生した透析治療には,エポエチン α の投与量が 4,000 U より多かったこととの関連も認められた(多変量オッズ比,4.0;95%信頼区間,1.3 ~ 12.3).透析手順の再調査からは,エポエチン α の防腐剤が含まれていない使い切りバイアルに何回も注射針を刺していたことと,複数のバイアルからエポエチン α の残薬をプールして患者に投与していたことが明らかになった.菌培養では,複数のバイアルからプールされたエポエチン α の残薬,エポエチン α の空バイアル,抗菌石鹸,およびハンドローションから,S. liquefaciens が分離された.さらに,これらの分離株は,パルスフィールドゲル電気泳動で,すべて同一株であることが確認された.この血液透析施設では,エポエチン α の残薬をプールするという習慣を中止して,汚染された石鹸とローションを取り替えてからは,S. liquefaciens による新たな菌血症も発熱性反応も発生しなかった.
血液透析治療室におけるこの菌血症の集団発生は,使い切りバイアルに何回も注射針を刺して使用していたこと,および防腐剤を含まないエポエチン α をプールして使用していたことが原因であった.このような集団発生を防ぐために,透析治療室では,その臨床的必要量にもっとも見合った用量の薬剤バイアルを使用すべきである.