心臓移植後の小児におけるウイルスゲノムと移植心廃絶との関連
Association of Viral Genome with Graft Loss in Children after Cardiac Transplantation
G.S. SHIRALI AND OTHERS
同種心臓移植のレシピエントは,拒絶反応と冠動脈血管障害によって,その生存が制限されている.心臓移植を受けた小児を対象としたこの研究の目的は,心筋へのウイルス感染について同種移植心臓の評価を行うこと,および心筋内におけるウイルスゲノムの存在と,拒絶反応,冠動脈血管障害,あるいは移植心廃絶との相関関係を調べることであった.
拒絶反応と冠動脈血管障害の可能性について評価を受けていた 1 日齢~18 歳までの心臓移植レシピエントを対象とした.心内膜心筋の生検検体を用いて,拒絶反応の根拠となる所見については標準的な基準で評価し,ウイルスの有無についてはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法で分析した.
PCR 法は,149 例の移植レシピエントから採取した 553 個の連続した生検検体で実施した.ウイルスゲノムが増幅されたのは,34 例(移植レシピエントの 23%)の患者から採取された 48 検体(生検検体の 8.7%)であった;その内訳は,アデノウイルスが 30 検体で検出され,エンテロウイルスが 9 検体,パルボウイルスが 5 検体,サイトメガロウイルスが 2 検体,単純ヘルペスウイルスが 1 検体,そしてエプスタイン–バーウイルスが 1 検体で検出された.PCR 法の結果が陽性であった 34 例の患者では,そのうちの 29 例(85%)に,生検の結果が陽性になってから 3 ヵ月以内に心臓の有害事象が発現し,9 例が冠動脈血管障害,慢性移植心不全,または急性拒絶反応によって移植心が廃絶した.PCR 法の結果が陰性であった 115 例の患者では,そのうちの 39 例(34%)に,PCR 法で陰性結果が得られてから 3 ヵ月以内に心臓の有害事象が発現した;PCR 陰性群の患者には,移植心が廃絶した患者は 1 例もいなかった.移植心廃絶のオッズは,PCR 法の結果が陽性であった患者で 6.5 倍高かった(p=0.006).アデノウイルスの検出は,移植心生着率のかなり大幅な低下に結び付いていた(p=0.002).
小児の移植レシピエントの心筋内におけるウイルスゲノムの同定,とりわけアデノウイルスの同定により,冠動脈血管障害と移植心廃絶を含む臨床有害事象が予知される.