Rickettsia africae,サハラ以南のアフリカへの旅行者におけるマダニ媒介病原菌
Rickettsia africae, a Tick-Borne Pathogen in Travelers to Sub-Saharan Africa
D. RAOULT AND OTHERS
アフリカダニ咬傷熱は,Rickettsia africae を保菌しているマダニと接触したあとに発病する.このマダニは,蓄牛や猟鳥獣類に寄生している.散発性の報告から,この感染症には特異的な臨床的,疫学的特徴があることが示唆されている.
アフリカあるいはグアドループへの旅行から帰国したあとに,リケッチア症の検査を受けた患者を対象として検討した.微量免疫螢光法,ウエスタンブロット法,および交差吸着法の価値を評価するために,これらの検査法の結果を,アフリカダニ咬傷熱であることがポリメラーゼ連鎖反応法または細胞培養,あるいはその両方によって確認されていた患者 39 例,R. conorii 感染症であることが確証されていた患者 50 例,および献血者 50 例において比較した.次に,これらの検査法をもとにした診断基準を,さらに患者を追加して,リケッチア症の血清検査を受けていたアフリカ南部からの帰国患者 376 例と,グアドループからの帰国患者 2 例に適用した.
R. africae 感染症の直接証拠が得られていた 39 例の患者で,特異的抗体を検出する微量免疫螢光法,ウエスタンブロット法,および交差吸着法を組み合せた方法では,R. africae 感染症診断の感度は 0.56 であった;しかしながら,これらの各検査法の陽性適中率と特異度はそれぞれ 1.0 であった.血清学的基準を用いると,さらに 80 例の患者が R. africae 感染症であった.R. africae に感染した患者は,アフリカの 11 ヵ国とグアドループへの旅行者であった.この感染症の病状は一般的には軽症で,その特徴は 46%の患者に発現した発疹であった;この発疹は,通常は斑点状または小水疱性の発疹で,紫斑状の発疹はまれであった.また,患者の 95%に咬傷瘢痕が認められ,これらの患者の 54%で複数個の瘢痕があった.これは,リケッチア感染症の患者にはあまり認められない知見である.
この研究によれば,サハラ以南のアフリカへの旅行後に病気にかかった患者のうち,ダニ咬傷リケッチア症の症例はそのほぼ全例で R. africae が原因菌であった.