January 25, 2001 Vol. 344 No. 4
ステント植込み後の再狭窄の再発を抑えるための限局性冠動脈内γ線照射療法
Localized Intracoronary Gamma-Radiation Therapy to Inhibit the Recurrence of Restenosis after Stenting
M.B. LEON AND OTHERS
冠動脈血管形成術後の再狭窄の頻度はステント植込みによって減少するが,ステント内に再狭窄が発生した場合には,さらに再狭窄が続発するリスクが 50%を超える.われわれは,ステント内再狭窄の治療としての冠動脈内照射療法に関する,多施設共同の二重盲検無作為試験について報告する.
ステント内に再狭窄が発生した 252 例の適格患者のうち,131 例をイリジウム-192(192Ir)の密封線源を内蔵した冠動脈内留置リボンの導入に,121 例を外観が類似した非放射性リボン(プラセボ)の導入に無作為に割り付けた.
9 ヵ月の追跡調査期間中に,死亡,心筋梗塞,および標的病変に対する血行再建術の再施行の必要性を合わせた主要エンドポイントが生じたのは,プラセボに割り付けられた患者の 53 例(43.8%)と,イリジウム-192 に割り付けられた患者の 37 例(28.2%)であった(p = 0.02).しかし,重大な有害心イベントの発生率の低下は,標的病変に対する血行再建術の再施行の必要性が減少したことのみによるもので,死亡や心筋梗塞の発生率の低下によるものではなかった.遅発性の血栓症は,イリジウム-192 群の 5.3%に発生したのに対して,プラセボ群では 0.8%にしか発生せず(p = 0.07),遅発性の心筋梗塞もイリジウム-192 群で多く発生するという結果になった(9.9% 対 4.1%,p = 0.09).放射線の照射を受けた患者に発生した遅発性血栓症は,経口抗血小板薬の治療(チクロピジンまたはクロピドグレル)を中止した後にしか発生せず,しかも放射線照射の治療時に新しいステントが導入された患者にしか発生しなかった.
イリジウム-192 による冠動脈内照射は,臨床的狭窄および血管造影法で確認された狭窄の発生率を低下させるという結果が得られたが,遅発性血栓症の発生率の上昇にも関連しており,結果的に心筋梗塞のリスクを上昇させるという結果になった.遅発性のステント内血栓症の問題を解決することができれば,イリジウム-192 による冠動脈内照射は,ステント内再狭窄の治療への有用なアプローチになるかもしれない.