生体ドナーから移植した腎臓の生着に対する長期透析の実施または未実施の影響
Effect of the Use or Nonuse of Long-Term Dialysis on the Subsequent Survival of Renal Transplants from Living Donors
K.C. MANGE, M.M. JOFFE, AND H.I. FELDMAN
長期透析を前もって開始していない場合の,生体ドナーから腎臓を移植したときの同種移植片の生着に対する影響については,意見が分かれている.
米国腎臓データシステム(U.S. Renal Data System)のデータを用いて,生体ドナーからの腎臓移植を受ける前に長期透析治療を受けていた患者または受けたことがない患者 8,481 例を対象として,後向きのコホート研究を実施した.移植前に長期透析を受けていた患者に対する長期透析を受けずに移植を受けた患者の同種移植片の相対的な生着不全率を,比例ハザード解析によって評価した.そのさい,移植センターや世帯収入額の中央値などの潜在的な交絡変数を補正した.また,透析を伴わない生体ドナーからの腎臓移植(「先制」移植)と,生検で確認された移植後 6 ヵ月以内の急性拒絶のリスクとの関連については,条件付きロジスティック回帰分析を用いて,移植センターによる補正を加えて評価した.
長期透析を受けることなく実施された生体ドナーからの腎臓移植には,透析後の移植と比較して,同種移植片が不全になるリスクの低下との関連がみられ,移植 1 年目には 52%(不全率比,0.48;p = 0.002),移植 2 年目には 82%(不全率比,0.18;p = 0.001),移植 3 年目以降には 86%(不全率比,0.14;p = 0.001)低下していた.しかし,移植 1 年目の同種移植片の不全率に認められた低下は,移植 1 年以内に発現した急性拒絶の時期で補正すると,その程度が小さくなった(不全率比,0.69;95%信頼区間,0.44~1.10;p = 0.10).透析期間の長期化も,移植後 6 ヵ月以内に発現する拒絶のオッズの上昇と関連していた(p = 0.001).
透析を前もって開始せずに生体ドナーからの腎臓を移植する先制移植は,透析開始後に実施される移植よりも,同種移植片の生着が長くなるという結果に結びつく.