重症患者の治療選択への理解
Understanding the Treatment Preferences of Seriously Ill Patients
T.R. FRIED, E.H. BRADLEY, V.R. TOWLE, AND H. ALLORE
生命維持治療の選択に関する患者への質問では通常,特定の医学的介入に焦点が置かれるが,治療転帰やその見込みが患者の選択に影響を及ぼす.
われわれは,60 歳以上で,癌,うっ血性心不全,または慢性閉塞性肺疾患のため余命が限られた 226 人に治療選択についてアンケートを実施した.試験参加者に,まず転帰が確かにわかっている場合に与えられる治療を受けたいか尋ね,そして有害転帰の種々の可能性が知られている場合に与えられる治療を受けたいか尋ねた.治療を行わなかった場合の転帰は,基礎疾患による死亡として明記された.
治療の重荷(すなわち,入院期間,検査の程度,医学的介入の侵襲性),転帰,転帰の見込みはすべて治療選択に影響した.現時点の健康を回復できる重荷の少ない治療に対しては,参加者の 98.7%が(治療を受けずに死ぬよりもむしろ)治療を受けることを選択すると答えたが,11.2%は重荷が大きければ治療を受けないと答えた.転帰が,生存ではあるが重度の機能障害あるいは認知障害を伴う場合では,それぞれ 74.4%と 88.8%が治療を受けないと答えた.治療を選択すると答えた参加者数は,有害転帰の見込みが増加するにつれて減少し,また転帰の見込みが死亡の場合よりも,機能または認知障害である場合に治療を選択する参加者はより少なかった.初期診断により治療選択が異なることはなかった.
事前医療計画では,治療の重荷,可能性のある転帰およびその見込みに対する患者の態度を考慮すべきである.治療による有害な機能・認知転帰の可能性は十分考慮する必要がある.