新たに発症した 1 型糖尿病における抗 CD3 モノクローナル抗体
Anti-CD3 Monoclonal Antibody in New-Onset Type 1 Diabetes Mellitus
K.C. HEROLD AND OTHERS
1 型糖尿病は,インスリン産生 β 細胞に対する T リンパ球の作用が原因で起る慢性自己免疫性疾患である.先行の臨床研究で,持続的な免疫抑制が一時的にインスリン産生の低下を遅延させることが示されている.前臨床研究では,CD3 に対するモノクローナル抗体が初診時の高血糖を回復させ,疾患の再発に対する忍容性を誘導できることを示唆した.
われわれは,1 型糖尿病患者において CD3 に対する非活性化ヒト化モノクローナル抗体である hOKT3γ1(Ala-Ala)のインスリン産生低下に対する作用を検討した.診断後 6 週間以内に患者 24 例をモノクローナル抗体の 14 日間単回投与群,または抗体を投与しない対照群のいずれかに無作為に割付け,疾患発症後最初の 1 年間調査した.
モノクローナル抗体治療では,治療群の 12 例中 9 例で 1 年後にインスリン産生が維持または改善したが,対照群では 12 例中わずか 2 例しか反応の維持がみられなかった(P=0.01).インスリン反応に対する治療の効果は診断後少なくとも 12 ヵ月持続した.またグリコシル化ヘモグロビン濃度とインスリンの投与量も,モノクローナル抗体群で減少した.重篤な副作用は発生せず,もっとも多くみられた副作用は発熱,発疹,貧血であった.臨床反応は,治療の 30 日後および 90 日後の CD4+ T 細胞 / CD8+ T 細胞比の変化と関連していた.
hOKT3γ1(Ala-Ala)による治療は,ほとんどの患者において 1 型糖尿病の発症 1 年目にインスリン産生の低下を和らげ,代謝調節を改善する.抗 CD3 モノクローナル抗体の作用機序は,病原性 T 細胞への直接作用,調節性細胞集団の誘導,またはその両方が関与しているかもしれない.