慢性心不全における心臓の再同期療法
Cardiac Resynchronization in Chronic Heart Failure
W.T. ABRAHAM AND OTHERS
以前の研究では,心房同期性両室ペーシングによる心臓の再同期療法が心室内伝導遅延のある心不全患者に臨床的効果をもたらすことが示唆されている.そこでわれわれは,この治療法を評価するため,二重盲検試験を実施した.
中等度から重症の心不全で,駆出率が 35%以下,QRS 間隔が 130 msec 以上の患者 453 例を心不全の標準療法を続けながら 6 ヵ月間,心臓の再同期療法群(228 例)または対照群(225 例)に無作為に割付けた.主要エンドポイントは,ニューヨーク心臓協会(New York Heart Association)の機能分類,QOL および 6 分間の歩行距離とした.
心臓の再同期療法群患者は,対照群と比べて 6 分間の歩行距離(+39 m 対 +10 m,P=0.005),機能分類(P<0.001),QOL(-18.0 点 対 - 9.0 点,P=0.001),運動負荷試験中のトレッドミル上の時間(+81 秒 対 +19 秒,P=0.001)および駆出率(+4.6% 対 -0.2%,P<0.001)の改善がみられた.また,心臓再同期療法群の患者のほうが対照群患者に比べて,心不全治療のために入院(8% 対 15%)または静脈内投与による薬物治療を受けた(7% 対 15%)患者は少なかった(両方の比較について P<0.05).補助装置の植込みは 8%の患者で失敗し,そのうちの 4 例は,難治性低血圧,徐脈または収縮不全を併発し(そのうちの 2 例は死亡),他の 2 例は冠状静脈洞の穿孔を併発し,心膜穿刺術を要した.
心臓の再同期療法は,中等度から重症の心不全および心室内伝導遅延のある患者に有意な臨床的改善をもたらす.