February 28, 2002 Vol. 346 No. 9
カリブ海から帰国した旅行者における広東住血線虫による好酸球性髄膜炎の発生
An Outbreak of Eosinophilic Meningitis Caused by Angiostrongylus cantonensis in Travelers Returning from the Caribbean
T.J. SLOM AND OTHERS
広東住血線虫を原因とする好酸球性髄膜炎の発生は,東南アジアや太平洋地域などの固有の感染地域でさえほとんど報告されていない.われわれは,カリブ海から帰国した旅行者における,広東住血線虫による髄膜炎の発生について報告する.
ジャマイカに旅行した若年成人 23 例を対象に,後ろ向きコホート研究を行った.旅行後 35 日以内に出現した頭痛に加えて,頸痛,項部硬直,皮膚感覚の変化,羞明,視覚障害のうち少なくとも 1 つを有することを,好酸球性髄膜炎の臨床的定義として用いた.
12 例が好酸球性髄膜炎の定義に合致した.症状は,米国への帰国後中央値 11 日(範囲,6~31 日)で発現した.好酸球増加症は,最終的には入院した 9 例全例に認められたが,初診時には,9 例のうち,4 例(44%)の末梢血と,5 例(56%)の髄液に認められたのみであった.反復腰椎穿刺およびコルチコステロイド療法により,重度の頭痛を有する患者 3 例中 2 例の症状が改善し,コルチコステロイド療法中に 3 例全例の頭蓋内圧が低下した.ある食事を摂ったこと(p=0.001),およびその食事でシーザーサラダを食べたこと(p=0.007)が,好酸球性髄膜炎と強く関連していた.広東住血線虫に特異的な 31kD 抗原に対する抗体が,11 例から採取した回復期血清中に検出された.
リスクのある旅行者において,頭痛,頭蓋内圧の亢進,髄液細胞増加の存在は,好酸球増加の有無にかかわらず,感覚異常や知覚過敏を伴っている場合はとくに,広東住血線虫感染の可能性を医師に警告するものである.