November 21, 2002 Vol. 347 No. 21
線維性骨異形成症における視神経管の狭窄を有しながらの正常視力
Normal Vision despite Narrowing of the Optic Canal in Fibrous Dysplasia
J.S. LEE AND OTHERS
線維性骨異形成症は,頭蓋底前部を侵すことが多く,結果として視神経管の不整狭窄が生じる.そのような不整狭窄が視神経の圧迫や最終的には失明をもたらすと推測されている.また,患者を定期的に観察すべきか,視神経の予防的減圧術を行うべきかが論争となっている.外科的減圧術に関連したリスクには失明が含まれるため,この問題は正常視力を有する患者においてとくに重大である.
蝶形骨小翼の線維性骨異形成症を有する患者 38 例を対象に研究を行った.患者に詳細な神経眼科学的検査および顔面と頭蓋のコンピュータ断層撮影を行い,画像を再構築して視神経管の障害の程度と視神経管の面積を測定した.結果を,年齢と性別をマッチさせた対照 38 例での結果と比較した.
患者 38 例中 15 例は男性,23 例は女性であり,平均年齢は 26 歳であった.12 例は,多骨性線維性骨異形成症を有し,26 例はマッキューン–オルブライト症候群を有した.67 本の視神経管が線維性骨異形成症に侵されており,そのうちの 49 例(73%)は完全な不整狭窄であった.右視神経管と左視神経管の平均(±SD)面積は,患者ではそれぞれ 9.6±3.8 mm2 と 9.9±3.6 mm2 であったのに対し,対照者ではそれぞれ 12.0±2.9 mm2 と 11.9±2.7 mm2 であった(対応のある t 検定による,右面積の比較に関して P=0.009,左面積の比較に関して P=0.03).2 例を除く患者全員では,神経眼科学的検査結果は正常であった.単眼性視覚障害の患者 2 例では,視神経管の面積は正常側と異常側では同等であった.
線維性骨異形成症における視神経管の不整狭窄は,視神経管の狭窄を引き起すが,それ自体が失明をもたらすものではない.したがって,線維性骨異形成症は失明とは関連していないので,画像診断上の線維性骨異形成の存在だけでは,視神経の予防的減圧術は適応にならないと考えられる.