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August 1, 2002 Vol. 347 No. 5

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重症肺高血圧症に対する吸入用イロプロスト
Inhaled Iloprost for Severe Pulmonary Hypertension

H. OLSCHEWSKI AND OTHERS

背景

プロスタサイクリンの安定な類似化合物である,イロプロスト(iloprost)吸入剤は,肺高血圧症患者において肺血管の選択的拡張を引き起し,血行動態と運動能力を改善することが,対照群を設定しない臨床試験で示唆されていた.

方 法

イロプロスト(2.5 μg または 5.0 μg)の毎日の反復吸入(1 日 6 回または 9 回;吸入用量の中央値,30 μg /日)とプラセボの吸入を比較した.特定の病態の重症肺動脈性肺高血圧症および慢性血栓塞栓性肺高血圧症(ニューヨーク心臓協会[NYHA]の心機能分類で III 度または IV 度)の患者,合計 203 例を組み入れた.主要エンドポイントは,12 週間後に,あらかじめ定義した基準による臨床症状の悪化や死亡を伴わずに,NYHA 機能分類が少なくとも 1 段階改善し,6 分間歩行距離が少なくとも 10%改善した場合に満たすものとした.

結 果

複合臨床エンドポイントを満たしたのは,プラセボ群の 4.9%に比べ,イロプロスト群患者では 16.8%であった(P=0.007).6 分間歩行距離は,イロプロスト群全体では 36.4 m 延長し(P=0.004),原発性肺高血圧症患者のサブグループでは 58.8 m 延長した.全体で,試験を完了しなかった患者の割合は,イロプロスト群では 4.0%(死亡した 1 例を含む),プラセボ群では 13.7%(死亡した 4 例を含む)であり(P=0.024),試験中止のもっとも多い理由は臨床症状の悪化であった.ベースライン値と比較すると,血流動態の値は,イロプロスト吸入後に測定した場合 12 週間で有意に改善し(P<0.001),イロプロスト吸入前の測定では大きな変化はなかった.またプラセボ群では有意に悪化した.さらに,イロプロスト治療の有意な有益効果には,NYHA 分類の改善(P=0.03),呼吸困難の改善(P=0.015),QOL の改善(P=0.026)が含まれた.失神は,両群で同様の頻度で起ったが,イロプロスト群では重篤と評価される頻度が高かった.しかしながら,この有害作用は臨床症状の悪化とは関連していなかった.

結 論

吸入イロプロストは,重症肺高血圧症患者にとって効果的な治療法である.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2002; 347 : 322 - 9. )