August 22, 2002 Vol. 347 No. 8
左冠動脈前下行枝の狭窄に対するステント留置と最小侵襲バイパス術との比較
Comparison of Stenting with Minimally Invasive Bypass Surgery for Stenosis of the Left Anterior Descending Coronary Artery
A. DIEGELER AND OTHERS
最小侵襲バイパス術と冠動脈ステント留置は共に,左冠動脈前下行枝近位部における単発性狭窄に対して認められた治療法である.今回われわれは,これら両手技を行ったあとの臨床転帰を比較した.
冠動脈の左冠動脈前下行枝近位部に高度の狭窄病変を有する症候性患者計 220 例を,110 例はバイパス術,110 例はステント留置に無作為に割付けた.複合臨床エンドポイントは,心疾患による死亡,心筋梗塞,および 6 ヵ月以内の標的病変における反復血行再建の必要性のような,重大な有害心イベントからの解放であった.
重大な有害心イベントは,ステント留置後の患者では 31%に起り,一方,手術群では 15%に起った(P=0.02).この差は,主に,ステント留置後の再狭窄に対する標的血管枝の反復血行再建によるものであった(29% 対 8%,P=0.003).死亡率と心筋梗塞率を併せると,両群に有意差はみられなかった(ステント群では 3%,手術群では 6%,P=0.50).有害事象は,手術後のほうが高頻度で発現した.6 ヵ月後に狭心症から解放された患者の割合は,手術群では 79%,ステント群では 62%であった(P=0.03).
冠動脈の左冠動脈前下行枝近位部に単発性で高度の狭窄病変を有する患者では,最小侵襲バイパス術と冠動脈ステント留置は共に効果的である.ステント留置のほうが,周術期の有害事象がより少なく短期成績は優れているが,標的血管への反復介入の必要性および追跡 6 ヵ月後の狭心症からの解放に関しては,手術のほうが優れている.