September 12, 2002 Vol. 347 No. 11
1 型糖尿病における夜間血圧の上昇と微量アルブミン尿症への進行
Increase in Nocturnal Blood Pressure and Progression to Microalbuminuria in Type 1 Diabetes
E. LURBE AND OTHERS
1 型糖尿病に微量アルブミン尿のみられる患者では,睡眠時に血圧が上昇することが多い.しかし,この血圧上昇が微量アルブミン尿症に付随して起るのか,あるいはそれに先行するのかについては明らかでない.
5 年を超えてアルブミンの尿中排泄が正常で血圧も正常な 1 型糖尿病の青少年および成人(10.1~33.3 歳)75 例をモニターした.携帯式血圧測定法を用いて,最初と約 2 年後に血圧評価を行った.2 年後の時点で,全被験者は尿中アルブミン排泄が正常であった.その後,被験者における微量アルブミン尿の出現の有無をモニターした.
微量アルブミン尿は 14 例で出現したが,残る 61 例は尿中アルブミン排泄が正常のままであった.睡眠時の平均(±SD)収縮期圧は,最終的に微量アルブミン尿症を発生した被験者で有意に上昇したが(109.9±11.3 mmHg から 114.9±11.7 mmHg へ,P=0.01),アルブミン排泄が正常な被験者では上昇しなかった(106.0±8.8 mmHg から 106.4±14.8 mmHg へ).微量アルブミン尿症への進行のリスクについて,日中の収縮期圧に対する睡眠時の収縮期圧の比率と比較して検討した.この比が 0.9 以下(正常な夜間血圧低下と定義)であると,微量アルブミン尿発生に対する陰性適中率が 91%であった.さらに,この値が 0.9 以下の被験者は,0.9 を超える被験者よりも微量アルブミン尿のリスクが 70%低かった(95%信頼区間 44~110%,P=0.01).
1 型糖尿病患者において,睡眠時の収縮期圧上昇は,微量アルブミン尿の出現に先行する.睡眠時に血圧が正常に低下する患者では,正常なアルブミン排泄から微量アルブミン尿へ進行する可能性はより低いと思われる.