March 27, 2003 Vol. 348 No. 13
特発性好酸球増多症候群におけるイマチニブの治療標的としての PDGFRA 遺伝子とFIP1L1 遺伝子の融合により生じたチロシンキナーゼ
A Tyrosine Kinase Created by Fusion of the PDGFRA and FIP1L1 Genes as a Therapeutic Target of Imatinib in Idiopathic Hypereosinophilic Syndrome
J. Cools and Others
特発性好酸球増多症候群は,臓器機能不全と関連した持続的な好酸球増加状態を伴う.その原因は不明である.この症候群の患者の,イマチニブに対する反応に関する最近の報告では,ABL,血小板由来成長因子受容体(PDGFR),KIT といった,イマチニブに阻害される活性化されたキナーゼが原因である可能性が示唆されている.
好酸球増多症候群患者 11 例にイマチニブを投与し,反応の分子的基礎を確認した.
イマチニブで治療した患者 11 例中 9 例が 3 ヵ月以上継続する反応を示し,好酸球数が正常に回復した.このような患者のうち 1 例は複雑な染色体異常を有しており,染色体 4q12 の中間部欠失により生じた,Fip1 様 1(FIP1L1)遺伝子と PDGFR α(PDGFRA)遺伝子の融合が同定された.FIP1L1-PDGFR α は,恒常的に活性化されているチロシンキナーゼであり,造血細胞を形質転換させ,イマチニブにより阻害される(50%阻害濃度,3.2 nM).FIP1L1-PDGFRA 融合遺伝子は,特発性好酸球増多症候群患者 16 例中 9 例にも検出され,3 ヵ月間以上継続してイマチニブに反応を示した患者では,9 例中 5 例に検出された.患者 1 例での再発は,イマチニブに対する抵抗性を付与する PDGFRA の T674I 突然変異の出現と関連していた.
好酸球増多症候群は,染色体の中間部欠失により生じた新しい融合チロシンキナーゼ,FIP1L1-PDGFR α に起因する可能性がある.再発時に T674I 耐性突然変異が起きていたことは,FIP1L1-PDGFR α がイマチニブの標的であることを示している.われわれのデータは,遺伝子の欠失により,機能が付加される融合蛋白が生成される可能性を示している.