March 27, 2003 Vol. 348 No. 13
無症候性脳梗塞と痴呆および認知機能低下のリスク
Silent Brain Infarcts and the Risk of Dementia and Cognitive Decline
S.E. Vermeer and Others
無症候性脳梗塞は,健康な高齢者の磁気共鳴画像(MRI)上でしばしば認められ,痴呆や認知機能低下と関連している可能性がある.
住民ベースの前向きのロッテルダムスキャン研究(Rotterdam Scan Study)参加者 1,015 人を対象に,無症候性脳梗塞と痴呆および認知機能低下のリスクとの関連を研究した.参加者はベースライン時に年齢が 60~90 歳で,痴呆や脳卒中の既往がない者とした.参加者は,ベースラインの 1995~96 年と 1999~2000 年の 2 度,神経心理学テストと脳の MRI 検査を受け,研究期間を通して痴呆の発症を監視された.年齢,性別,教育レベル,皮質下の萎縮の有無,および白質病変の有無を補正して,Cox 比例ハザード回帰分析および多重線形回帰分析で解析した.
痴呆は,追跡期間 3,697 人-年において( 1 人当り平均 3.6 年),参加者 1,015 人中 30 人に発症した.ベースラインで無症候性脳梗塞があると,痴呆のリスクが 2 倍以上になった(ハザード比 2.26;95%信頼区間 1.09~4.70).ベースラインの MRI 検査で無症候性脳梗塞が確認されたことは,神経心理学テストの成績がよりわるくなることと全般的認知機能低下の急激な低下と関連していた.無症候性の視床梗塞は記憶力の低下と関連し,視床以外の部位での梗塞は精神運動速度の低下と関連していた.ベースラインで無症候性脳梗塞のあった参加者を,追跡期間中にさらに梗塞を起した者と起していない者に細分すると,認知機能の低下は,さらに無症候性梗塞を起した参加者に限られていた.
無症候性脳梗塞のある高齢者は痴呆発症のリスクが高く,梗塞のない高齢者と比較して認知機能がより急激に低下する.