March 27, 2003 Vol. 348 No. 13
心不全と閉塞性睡眠時無呼吸を併発した患者における持続気道陽圧の心血管への効果
Cardiovascular Effects of Continuous Positive Airway Pressure in Patients with Heart Failure and Obstructive Sleep Apnea
Y. Kaneko and Others
閉塞性睡眠時無呼吸は,機能の低下した心臓に有害な血行力学的負荷とアドレナリン分泌による負荷をかけるため,心不全を進行させる可能性がある.そこで,持続気道陽圧を用いた閉塞性睡眠時無呼吸の治療によって,心不全患者の左室の収縮機能が改善するだろうという仮説を立てた.
心不全に対する最適な内科的治療を受けている,左室駆出率の低下(45%以下)した閉塞性睡眠時無呼吸患者 24 例に対し,睡眠ポリグラフィを行った.翌朝,フォトプレチスモグラフィ(photoplethysmography)で患者の血圧と心拍数を,心エコー検査で左室径と左室駆出率を評価した.次に被験者を 1 ヵ月間の内科的治療のみ(12 例),または内科的治療と持続気道陽圧との併用療法(12 例)のいずれかに無作為に割り付けた.その後評価プロトコルを繰り返し行った.
内科的治療のみを受けた対照群の患者では,研究期間中に閉塞性睡眠時無呼吸の重症度,日中の血圧,心拍数,左室収縮末期径,左室駆出率に有意な変化はみられなかった.一方,持続気道陽圧群では,閉塞性睡眠時無呼吸が顕著に減少し,日中の収縮期血圧は平均(±SE)126±6 mmHg から 116±5 mmHgに低下した(P=0.02).また,心拍数は 68±3/分から 64±3/分に減少し(P=0.007),左室収縮末期径は 54.5±1.8 mm から 51.7±1.2 mm に減少(P=0.009),左室駆出率は 25.0±2.8%から 33.8±2.4%に改善した(P<0.001).
内科的治療を受けた心不全患者では,合併する閉塞性睡眠時無呼吸に対して持続気道陽圧による治療を行うと,収縮期血圧が下がり,左室収縮機能が改善する.閉塞性睡眠時無呼吸は,上記のように心不全に有害な影響をもたらす可能性があるが,標的治療によって対処できる.