高齢者における肺炎球菌ポリサッカライドワクチンの有効性
Effectiveness of Pneumococcal Polysaccharide Vaccine in Older Adults
L.A. Jackson and Others
肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)は高齢者の肺炎の主な原因であるが,肺炎球菌ポリサッカライドワクチンの使用により市中感染性肺炎の全リスクが変化するかどうかは,いまだ不明である.われわれは,高齢者の大規模集団を対象に肺炎球菌ワクチンの有効性を評価した.
この後ろ向きコホート研究では,グループ健康協同組合(Group Health Cooperative)の 65 歳以上の加入者 47,365 例を 3 年間評価した.主要転帰は,市中感染性肺炎(病歴の再検討より確認)による入院,入院していない患者における肺炎(管理データの情報源から決定された「外来患者肺炎」),および肺炎球菌性菌血症であった.年齢,性別,高齢者福祉施設の入所者であるか否か,喫煙状況,疾病状態,およびインフルエンザワクチン接種の有無を補正し,多変量 Cox 比例ハザードモデルを用いて,肺炎球菌ワクチンの接種と各転帰のリスクとの関連性を評価した.
研究期間中,コホート集団の 1,428 例が市中感染性肺炎で入院し,3,061 例が外来患者肺炎と診断され,61 例が肺炎球菌性菌血症であった.肺炎球菌ワクチン接種は,肺炎球菌性菌血症のリスクの減少と有意に関連したが(ハザード比 0.56;95%信頼区間 0.33~0.93),肺炎による入院リスクのわずかな増加と関連した(ハザード比 1.14;95%信頼区間 1.02~1.28).また,肺炎球菌ワクチンの接種は,外来患者肺炎のリスク(ハザード比 1.04;95%信頼区間 0.96~1.13)や,あらゆる市中感染性肺炎のリスク(ハザード比 1.07;95%信頼区間 0.99~1.14)を,入院の必要があったか否かにかかわらず,変化させなかった.
これらの知見は,菌血症予防のための肺炎球菌ポリサッカライドワクチンの有効性を支持しているが,非菌血症性の肺炎を予防するには代替となる方法が必要であることを示唆している.非菌血症性の肺炎は,高齢者の肺炎球菌感染でより多くみられる症状である.