精神保健「カーブアウト」制度が抗精神病治療の継続に及ぼす影響
Effect of a Mental Health “Carve-Out” Program on the Continuity of Antipsychotic Therapy
W.A. Ray, J.R. Daugherty, and K.G. Meador
1996 年 7 月 1 日,テネシー州の拡大メディケイド制度,テンケア(TennCare)は,費用削減策として,精神保健サービスの提供を,完全人頭制で専門機関への「カーブアウト(業務分離)」制度であるテンケア・パートナー(TennCare Partners)に急速に移転させた.われわれは,この移行が,過去に治療を遵守していた重症精神病患者における抗精神病治療の継続に及ぼす影響を検討した.
対象患者は 21~64 歳で,研究期間を通して登録され,12 ヵ月間の追跡調査に入る前の 6 ヵ月間のベースライン期間中,抗精神病治療を遵守していた.対象集団には,移行開始日から追跡を始めた患者 4,507 例(移行後コホート)と,移行開始 1 年前に追跡を始めた患者 3,644 例(移行前コホート)とを組み入れた.追跡期間中に抗精神病治療が継続されなかったこと(追跡期間中に治療しなかった日が 60 日以上)と抗精神病治療の平均日数について 2 集団を比較した.
移行前コホートと比較し,移行後コホートでは追跡期間中の継続性喪失のオッズが上昇し(多変量オッズ比 1.18[95%信頼区間 1.07~1.30],P=0.001),平均抗精神病治療日数が短かった(平均短縮期間 4.2 日[95%信頼区間 1.7~6.7 日],P=0.001).この差は,ベースライン時にリスクが高く,治療継続が非常に重要であった患者(抗精神病薬の徐放性注射剤[デポー製剤]が必要な患者,または精神病による入院患者)においてきわめて顕著であった(継続性喪失のオッズ比 1.79[95%信頼区間 1.45~2.22];P<0.001;抗精神病治療日数の平均短縮は 14.4 日[95%信頼区間 9.4~19.4];P<0.001).これらの患者では移行直後に抗精神病薬の使用が減少した;追跡期間 12 ヵ月間にわたって低使用が持続した.
現在広く用いられている業務分離制度は,主として費用削減のため計画されたものであるが,これらの知見は,その制度への移行が臨床上の転帰に悪影響を及ぼさないことを保証する必要性を強調するものである.