フィンランドの小児におけるセリアック病の有病率
Prevalence of Celiac Disease among Children in Finland
M. Maki and Others
小麦,ライ麦,および大麦の蛋白は,遺伝的に感受性の高い人において,自己免疫型の胃腸疾患であるセリアック病を引き起す.この疾患が過少診断されている可能性があるため,われわれはこの疾患の有病率を推定し,血清中の自己抗体の分析が未治療のセリアック病を発見するために利用でき,陽性所見が特定の HLA ハプロタイプと関連するという仮説を検証した.
1994 年に 3,654 人の学童・生徒(7~16 歳)から血清検体を採取し,2001 年に筋内膜抗体および組織トランスグルタミナーゼ抗体のスクリーニング検査を行った.HLA タイピングも保存血液検体で行った.抗体陽性の被験者全員に,2001 年に小腸生検を受けるよう依頼した.
2001 年の結果では,被験者 3,654 例中 56 例(1.5%)で抗体検査が陽性であった.2 つの抗体検査の結果は非常によく一致した.1994 年の時点ではセリアック病と臨床的に診断された被験者はいなかったが,1994 年に採取した血清で両抗体の検査が陽性であった 10 例が,1994~2001 年にセリアック病と診断された.上記以外の抗体検査陽性被験者で 2001 年に生検を受けることに同意した 36 例中 27 例は,生検でセリアック病の徴候がみられた.したがって,生検による確定診断での推定有病率は小児 99 人につき 1 例であった.抗体陽性被験者では,2 例を除く全員が HLA-DQ2 または HLA-DQ8 ハプロタイプを保持していた.抗体陽性とセリアック病に関連する HLA ハプロタイプの組み合せの保有率は,67 人中 1 例であった.
血清中に組織トランスグルタミナーゼおよび筋内膜に対する自己抗体が存在することは,セリアック病を示唆する小腸異常を予測させる.自己抗体陽性と特定の HLA ハプロタイプのあいだには高い相関がある.フィンランドの学童・生徒におけるセリアック病の有病率は 99 人につき 1 例以上と推定される.