高齢者における余暇活動と痴呆のリスク
Leisure Activities and the Risk of Dementia in the Elderly
J. Verghese and Others V. Diehl and Others
余暇活動への参加は,痴呆リスクの減少と関連付けられてきた.余暇活動への参加の増加が痴呆リスクを減少させるのか,あるいは痴呆の発症前の段階に余暇活動への参加が減少するのかは不明である.
年齢が 75 歳以上の対象者 469 例の前向きコホートで,余暇活動と痴呆リスクとの関係を調査した.被験者は地域社会に住み,ベースライン時に痴呆がなかった.登録時の余暇活動への参加頻度を調査し,認知活動と身体活動のスコアを割り出した(測定単位は 1 週間当りの活動日数).年齢,性別,教育レベル,慢性疾患の有無,ベースライン時の認知状態を補正し,Cox 比例ハザード分析を用いて,余暇活動への参加のベースライン値に基づいて痴呆リスクを評価した.
中央値 5.1 年の追跡期間に,被験者 124 例に痴呆が発症した(アルツハイマー病61 例,血管性痴呆 30 例,混合型痴呆 25 例,他の型の痴呆 8 例).余暇活動では,読書,ボードゲームをする,楽器を演奏する,およびダンスをすることが痴呆リスクの減少と関連していた.認知活動スコアの 1 点増加は痴呆リスクの減少と有意に関連していたが(ハザード比 0.93[95%信頼区間 0.90~0.97]),身体活動スコアの 1 点増加は関連していなかった(ハザード比 1.00).認知活動スコアとの関連性は,ベースライン時に痴呆の前段階の可能性があった被験者を除外したあとも残った.アルツハイマー病と血管性痴呆についても,結果は類似していた.線形混合モデルでは,ベースライン時の認知活動への参加の増加が記憶低下率の減少と関連していた.
余暇活動への参加は痴呆リスクの減少と関連しており,ベースライン時の認知状態で補正しても,痴呆の前段階の可能性がある被験者を除外しても,その関連は変らない.認知余暇活動の痴呆リスクに対する予防効果を評価するには,対照試験が必要である.