低身長の青年に対する黄体形成ホルモン放出ホルモン作動薬を用いた治療
Treatment with a Luteinizing Hormone-Releasing Hormone Agonist in Adolescents with Short Stature
J.A. Yanovski and Others
黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)作動薬を用いた治療は,LHRH 依存性思春期早発症児の成人身長を高くし,また低身長の青年の身長を高くする目的で処方する臨床医もいる.われわれは,LHRH 作動薬治療により,正常時期に思春期に入った低身長青年の成人身長が高くなるかどうかを判定するための無作為臨床試験を実施した.
予測成人身長の低い(平均[±SD]が,母平均より 3.3±1.2 SD 低い)低身長青年 50 人(男子 18 人,女子 32 人)に,プラセボ(24 例)あるいは LHRH 作動薬(26 例)を投与した.平均(±SD)の治療期間は,LHRH 作動薬群では 3.5±0.9 年で,プラセボ群では 2.1±1.2 年であった(P<0.001).成人身長は,骨年齢が女子 16 歳,男子 17 歳を超え,身長の伸び率が 1.5 cm/年を下回ったときに測定した.
青年 47 例(94%)を成人身長に達するまで追跡調査した.成人身長に達した時点で,LHRH 作動薬治療を受けてきた被験者は,プラセボ群の被験者よりも年齢が高く(20.5±2.1 歳 対 18.0±2.5 歳,P=0.01),身長がより高かった(標準偏差スコア -2.2±1.1 対 -3.0±1.2;P=0.01).共分散分析は,LHRH 作動薬治療が,身長の標準偏差スコアで 0.6 の増加(95%信頼区間 0.2~0.9),当初の予測成人身長よりも 4.2 cm の増加(95%信頼区間 1.7~6.7)につながったことを示した(P=0.01).LHRH 作動薬による治療は,男子・女子,特発性低身長の青年,成長制限症候群の青年において,プラセボよりも成人身長を有意に増加する結果となった.LHRH 作動薬群における重要な有害事象は,骨塩密度増加率の低下であった(成人身長に達した時点での平均の腰椎骨塩密度は母平均より 1.6±1.2 SD 低く,これに対しプラセボ群では母平均より 0.3±1.2 SD 低い;P<0.001).
3.5 年間の LHRH 作動薬治療により,非常に低身長の青年において成人身長が 0.6 SD 増加したが,骨塩密度が大幅に減少した.このような治療は,正常時期に思春期に入った青年の身長を高くする目的には,通常勧めることができない.