October 16, 2003 Vol. 349 No. 16
遅発性マラリア ― 旅行者に対する予防的化学療法の意義
Delayed Onset of Malaria ― Implications for Chemoprophylaxis in Travelers
E. Schwartz, M. Parise, P. Kozarsky, and M. Cetron
旅行者が使用する抗マラリア薬のほとんどはマラリア原虫が赤血球に侵入した段階で作用するため,遅発性マラリア,とくに再発性のマラリアを引き起す種によるマラリアの発症を予防できない.われわれはイスラエル人と米国人の旅行者において,この問題の重要性を検討した.
旅行者の目的地,感染種,使用された予防的化学療法および潜伏期を明らかにするため,イスラエルおよび米国のマラリア・サーベイランスデータを調べた.
イスラエルでは 1994~99 年に,帰国した旅行者の中に,マラリア原虫の種の同定が可能であったマラリア患者 300 症例が存在した.これらの症例中 134 例(44.7%)では旅行者が帰国したあと 2 ヵ月以上経ってから発症し,さらにほぼ全例が三日熱マラリア原虫(Plasmodium vivax)または卵形マラリア原虫(P. ovale)の感染が原因であった.134 例中 108 例(80.6%)では,国のガイドラインに従った抗マラリア療法を行っていた.米国では 1992~98 年に,旅行者の中に,原因を評価することのできたマラリア患者 2,822 症例が存在した.これらの旅行者中 987 例(35.0%)に遅発性マラリアが発症した.感染の原因は旅行者の 811 例が P. vivax,66 例が P. ovale,59 例が熱帯熱マラリア原虫(P. falciparum),51 例が四日熱マラリア原虫(P. malariae)であった.遅発性発症患者のうち,614 例(62.2%)が有効な抗マラリア薬を適切に服用していた.
マラリア感染旅行者の 1/3 以上が,帰国後 2 ヵ月以上経ってから発症した.遅発性マラリアの大半は,広く使用されている赤血球内の原虫の駆除に有効な殺シゾント薬では予防されない.旅行者のマラリアをより効果的に予防するには,マラリア原虫が肝臓に寄生する時期に作用する薬剤が必要である.