October 16, 2003 Vol. 349 No. 16
遺伝性甲状腺髄様癌の早期の悪性進行
Early Malignant Progression of Hereditary Medullary Thyroid Cancer
A. Machens and Others
加齢に伴う C 細胞過形成から甲状腺髄様癌への進行は,「トランスフェクション時に再編成した(rearranged during transfection: RET)」原癌遺伝子におけるさまざまな生殖細胞系変異と関連している.それらの変異は,予防的手術の最適な時期を決定するために利用できる.
1993 年 7 月~2001 年 2 月までにヨーロッパで実施した多施設共同研究において,生殖細胞系に RET 点突然変異があり,20 歳以下で,無症候の,RET に変異が確認されたあとに甲状腺全摘術を受けた患者を登録した.除外基準は,最大径で 10 mm を超える甲状腺髄様癌および遠隔転移とした.
全体で,145 家族から 207 例の患者が同定された.変異した細胞外および細胞内領域のコドンにしたがって RET 変異をグループ分けした患者とコドン 634 の遺伝子型の患者では,C 細胞過形成から甲状腺髄様癌へ,そして最終的にはリンパ節転移へと,加齢に伴い有意に進行した.14 歳未満の患者ではリンパ節転移は認められなかった.加齢に伴う浸透度は,さまざまなコドン 634 変異によってコードされるアミノ酸置換の種類には影響されなかった.癌発症時の年齢に関するコドンによる相違や,随伴する副腎および副甲状腺の関与における家族性の割合から,進行のリスクは,個々の RET 変異の形質転換能に基づいていたことが示唆される.
これらのデータは,RET 遺伝子変異の無症候性キャリアにおける予防的甲状腺切除の時期について,最初の指針を提供している.