November 20, 2003 Vol. 349 No. 21
併用抗レトロウイルス療法と心筋梗塞のリスク
Combination Antiretroviral Therapy and the Risk of Myocardial Infarction
The Data Collection on Adverse Events of Anti-HIV Drugs (DAD) Study Group
併用抗レトロウイルス療法への曝露が心筋梗塞のリスクを増加させるかどうかについては議論が続いている.
この前向き観察研究では,既存の 11 のコホート集団から患者 23,468 例を 1999 年 12 月~2001 年 4 月に組み入れ,2002 年 2 月まで追跡情報を収集した.ヒト免疫不全ウイルス感染に関するデータと,心筋梗塞の危険因子およびその発生率に関するデータを収集した.Poisson 回帰モデルにより相対発生率を算出した.併用抗レトロウイルス療法は,プロテアーゼ阻害薬または非ヌクレオシド逆転写酵素阻害薬いずれかの抗レトロウイルス薬を含む,すべての併用療法と定義した.
36,199 人年の期間に患者 126 例が心筋梗塞を発症した.併用抗レトロウイルス療法への曝露が長くなるほど心筋梗塞の発症率が増加した(曝露 1 年当りの補正相対発生率 1.26 [95%信頼区間 1.12~1.41];P<0.001).その他心筋梗塞に有意に関連した因子としては,高齢,現在または以前の喫煙,心血管疾患の既往,男性であることがあったが,冠動脈性心疾患の家族歴には関連していなかった.血清総コレステロールの高値,トリグリセリドの高値,糖尿病の存在も心筋梗塞発生率の増加に関連していた.
併用抗レトロウイルス療法は,治療開始 4~6 年目の期間に,曝露 1 年当りの心筋梗塞の発症率が相対的に 26%増加することと独立して関連していた.しかし,心筋梗塞の絶対リスクは低く,抗レトロウイルス療法がもたらす著明な利益とのバランスを考慮しなければならない.