March 18, 2004 Vol. 350 No. 12
ベトナムの患者 10 例における鳥インフルエンザ A(H5N1 型)
Avian Influenza A (H5N1) in 10 Patients in Vietnam
T.T. Hien and Others
最近アジア全域で家禽類に流行している鳥インフルエンザ A(H5N1 型)は,経済と健康に重大な影響を及ぼしている.2004 年 1 月,ベトナムでこのウイルスのヒトへの感染が認められた.
2003 年 12 月および 2004 年 1 月に,ベトナムのホーチミン市とハノイ市の病院を受診し,鳥インフルエンザ A(H5N1 型)と確認された症例 10 例の臨床的特徴,および現段階での疫学的所見を報告する.
10 例全例において,ウイルス培養または H5 および N1 に特異的なプライマーを用いた逆転写ポリメラーゼ連鎖反応で,インフルエンザ A(H5N1 型)の診断が確定された.患者 10 例(平均年齢 13.7 歳)のうち,先行疾患を有していた者はいなかった.10 例中 9 例には,明らかに家禽類との直接の接触歴があった(疾患発病までの時間の中央値,3 日間).患者全例に発熱(体温 38.5~40.0℃),呼吸器症状,臨床的に顕著なリンパ球減少(リンパ球数の中央値,700/μL)が認められた.血小板数の中央値は 75,500/μL であった.7 例に下痢が認められた.全例で胸部 X 線写真に顕著な異常が認められた.ヒトからヒトへの感染を示す確定的な証拠はなかった.8 例が死亡,1 例が回復し,1 例は回復に向っている.
インフルエンザ A(H5N1 型)感染は,発熱,呼吸器症状,リンパ球減少を特徴とし,死亡するリスクが高い.10 例全例が感染家禽類から直接感染したと考えられるが,ヒトインフルエンザウイルスと遺伝子再集合を起し,ヒトからヒトへ感染するようになる可能性がある.したがって,アジア全域で家禽類のインフルエンザ A(H5N1 型)を緊急に封じ込める必要がある.
(本論文は 2004 年 2 月 25 日 www.nejm.org に発表された.)