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April 29, 2004 Vol. 350 No. 18

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ATP 感受性カリウムチャネルサブユニット Kir6.2 をコードする遺伝子における活性化変異と永続型の新生児糖尿病
Activating Mutations in the Gene Encoding the ATP-Sensitive Potassium-Channel Subunit Kir6.2 and Permanent Neonatal Diabetes

A.L. Gloyn and Others

背景

永続型の新生児糖尿病の患児は,通常生後 3 ヵ月以内に発症し,インスリン療法を必要とする.ほとんどの場合,その原因は不明である.グルコース刺激による膵臓 β 細胞からのインスリン分泌には,ATP 感受性カリウム(KATP)チャネルが介在することから,このチャネルの Kir6.2 サブユニットをコードする遺伝子(KCNJ11)の活性化変異が,新生児糖尿病を引き起すという仮説を立てた.

方 法

永続型の新生児糖尿病患児 29 例で,KCNJ11 遺伝子の塩基配列を決定した.この遺伝子に突然変異を有する患児において,グルカゴン,グルコース,スルホニル尿素系薬剤トルブタミドの静脈内投与に対するインスリン分泌反応を評価した.

結 果

患児 29 例中 10 例で,6 つの新しいヘテロ接合ミスセンス突然変異が同定された.このうち 2 例の糖尿病は家族性のものであり,8 例は自然突然変異によるものであった.これらの患児の新生児糖尿病は,ケトアシドーシスまたは顕著な高血糖を特徴としているため,インスリンで治療を行った.患児は,グルコースまたはグルカゴンに反応してインスリンを分泌することはなかったが,トルブタミドに反応してインスリンを分泌した.また,患児 4 例に重度の発育遅延と筋力低下が認められ,そのうちの 3 例にはてんかんおよび軽度の形成異常もみられた.Kir6.2 でもっともよくみられた突然変異を,アフリカツメガエル(Xenopus laevis)の卵母細胞でスルホニル尿素受容体 1 と共発現させた場合,ATP の変異 KATP チャネルを遮断する能力は大幅に低下した.

結 論

Kir6.2 をコードする遺伝子におけるヘテロ接合性の活性化変異は,永続型の新生児糖尿病を引き起し,発育遅延,筋力低下,てんかんとも関連している可能性がある.永続型の新生児糖尿病の遺伝的要因を同定することで,スルホニル尿素を用いたこの疾患の治療が効果的に行われる可能性がある.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2004; 350 : 1838 - 49. )