進行性上咽頭癌患者における血漿 EB ウイルス DNA の定量
Quantification of Plasma Epstein–Barr Virus DNA in Patients with Advanced Nasopharyngeal Carcinoma
J.-C. Lin and Others
進行性上咽頭癌患者において,EB ウイルス(EBV)DNA の血漿濃度の臨床的意義を検討した.
生検で確認された病期 III 期または IV 期の上咽頭癌で,転移のない(M0)患者 99 例を対象に,週 1 回 10 週間の化学療法を行い,その後放射線療法を行った.患者から採取した血漿検体について,リアルタイム定量ポリメラーゼ連鎖反応法を行った.血漿と原発腫瘍に由来するペア検体において,EBV の遺伝子型を比較した.
99 例中 94 例では,治療前に血漿 EBV DNA を検出することができたが,健常対照 40 例と治癒例 20 例では検出できなかった.血漿 EBV DNA 濃度の中央値は,病期 III 期の上咽頭癌患者 25 例で 681 コピー/mL,IV 期の患者 74 例で 1,703 コピー/mL,遠隔転移のある対照患者 19 例で 291,940 コピー/mL であった(P<0.001).再発患者では,再発のない患者と比較して,治療前の血漿 EBV DNA 濃度が有意に高かった(中央値 3,035 コピー/mL 対 1,202 コピー/mL;P=0.02).血漿と原発腫瘍のペア検体における EBV DNA の遺伝子型が一致していたことから,循環血中の無細胞 EBV DNA が原発腫瘍由来である可能性が示唆された.再発患者では血漿 EBV DNA 濃度がリバウンドしたが,それとは対照的に,完全寛解した患者では持続的に低値を示すか,検出できなかった.全生存率(P<0.001)と無再発生存率(P=0.02)は,治療前の血漿 EBV DNA 濃度が 1,500 コピー/mL 未満の患者と比較して,1,500 コピー/mL 以上の患者で有意に低かった.血漿 EBV DNA が持続的に検出された患者では,放射線療法完了後 1 週目に EBV DNA が検出できなかった患者と比較して,全生存率(P<0.001)と無再発生存率(P<0.001)が有意に低かった.
血漿 EBV DNA の定量は,上咽頭癌患者のモニタリングと治療転帰の予測に有用である.