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July 8, 2004 Vol. 351 No. 2

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ドキソルビシン投与を受けた急性リンパ芽球性白血病の小児における心筋傷害に対するデクスラゾキサンの影響
The Effect of Dexrazoxane on Myocardial Injury in Doxorubicin-Treated Children with Acute Lymphoblastic Leukemia

S.E. Lipshultz and Others

背景

ドキソルビシンを用いた化学療法は,急性リンパ芽球性白血病(ALL)患児に対し非常に有効であるが,ドキソルビシンは心筋細胞を傷害する.デクスラゾキサン(dexrazoxane)はフリーラジカルスカベンジャーであり,ドキソルビシンに関連した傷害から心臓を保護する可能性がある.

方 法

ドキソルビシンに関連した心筋細胞の傷害がデクスラゾキサンにより減少するかどうかを明らかにするために,ALL 患児 101 例をドキソルビシン(30 mg/m2 [体表面積] を 3 週間ごとに 10 回)を単独投与する群に,105 例をデクスラゾキサン(300 mg/m2)の投与直後にドキソルビシンを投与する群に無作為に割付けた.ドキソルビシン単独群の 101 例中 76 例とドキソルビシン+デクスラゾキサン併用群の 105 例中 82 例で,血清中の心筋トロポニン T を連続的に測定した.ドキソルビシンの投与前,投与中,投与後に,計 2,377 例の血清検体(患者 1 例につき平均 15.1 検体)を採取した.トロポニン T 濃度は盲検下で評価し,主要エンドポイントである高値(>0.01 ng/mL)または非常に高値(>0.025 ng/mL)を示すかどうかを確定した.

結 果

トロポニン T 濃度の高値は,患者の 35%(158 例中 55 例)で認められた.ドキソルビシン単独で治療を行った患者では,ドキソルビシンとデクスラゾキサンを併用投与した患者と比較して,トロポニン T 濃度が高値(50% 対 21%,P<0.001),または非常に高値(32% 対 10%,P<0.001)を示す確率が高かった.追跡期間の中央値は 2.7 年であった.2.5 年の時点での無イベント生存率は両群とも 83%であった(log-rank 検定で P=0.87).

結 論

デクスラゾキサンは,小児 ALL に対するドキソルビシンの使用に関連した,トロポニン T 高値で示される心筋傷害を,ドキソルビシンの抗白血病作用を損なうことなく予防・減少させる.4 年後の心エコー所見および無イベント生存率に対するデクスラゾキサンの影響を明らかにするためには,より長期の追跡が必要とされる.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2004; 351 : 145 - 53. )