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August 12, 2004 Vol. 351 No. 7

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慢性骨髄性白血病の急性転化における白血病幹細胞の候補としての顆粒球マクロファージ前駆細胞
Granulocyte-Macrophage Progenitors as Candidate Leukemic Stem Cells in Blast-Crisis CML

C.H.M. Jamieson and Others

背景

慢性骨髄性白血病(CML)の急性転化期への進行には,白血病幹細胞の自己複製が役割を果している.正常なマウス造血幹細胞では,自己複製の過程に β カテニンシグナル伝達経路が関与している.われわれは,CML の白血病幹細胞も,自己複製に β カテニンシグナル伝達経路を利用しているかどうかを検討した.

方 法

さまざまな病期の CML から得た骨髄と正常骨髄から,造血幹細胞,共通の骨髄系前駆細胞,顆粒球マクロファージ前駆細胞,巨核球・赤血球系前駆細胞を,フローサイトメーター(FACS)を用いて単離した.定量的 RT-PCR を行い,正常者および CML 患者の造血幹細胞と顆粒球マクロファージ前駆細胞で,BCR-ABL,β カテニン,LEF-1 の転写産物を比較した.共焦点蛍光顕微鏡とリンパ系増強因子/T 細胞因子レポーターアッセイを用いて,造血幹細胞と顆粒球マクロファージ前駆細胞の核の β カテニンを検出した.in vitro 継代アッセイにより,自己複製能を示す細胞を白血病幹細胞の候補として同定した.レンチウイルスを用い,β カテニン経路阻害物質アキシンを造血前駆細胞に形質導入して,これらの細胞の自己複製能が β カテニンの活性化に依存しているかを検討した.

結 果

急性転化期の CML 患者とイマチニブ抵抗性 CML 患者では,顆粒球マクロファージ前駆細胞のプールが増大しており,それらの細胞は BCR-ABL を発現していた.また,これらの細胞では,核の β カテニン濃度は正常骨髄由来の前駆細胞よりも高かった.正常顆粒球マクロファージ前駆細胞とは異なり,CML の顆粒球マクロファージ前駆細胞は,自己複製する継代可能な骨髄コロニーを形成し,in vitro での自己複製能は,アキシンを強制発現させると減少した.

結 論

CML の顆粒球マクロファージ前駆細胞では,β カテニンの活性化により,これらの細胞の自己複製活性や白血病細胞への分化能が強まると考えられる.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2004; 351 : 657 - 67. )