メシル酸イマチニブ投与患者における骨代謝とミネラル代謝の変化
Altered Bone and Mineral Metabolism in Patients Receiving Imatinib Mesylate
E. Berman and Others
メシル酸イマチニブは,BCR-ABL,C-KIT 受容体,血小板由来成長因子受容体 α,β を含む複数のチロシンキナーゼを阻害する.これらのチロシンキナーゼはいずれも疾患と関連している.われわれは,イマチニブの投与を受けている慢性骨髄性白血病患者と消化管間質腫瘍患者の一部で,低リン血症が発現していることを認めた.
イマチニブ投与を受けており,血清リン値が低い患者 16 例と血清リン値が正常な患者 8 例を同定し,生化学検査を実施した.検査では,全血中のイオン化カルシウム値,血漿中の副甲状腺ホルモン intact の値,血清中の総カルシウム,リン,25-ヒドロキシビタミン D,1,25-ジヒドロキシビタミン D,マグネシウム,骨形成マーカー(骨アルカリホスファターゼおよびオステオカルシン),骨吸収マーカー(コラーゲン架橋 N-テロペプチド)の濃度を測定した.また,尿検査を行い,随意尿中のリン,カルシウム,クレアチニン値を測定した.
リン低値群の患者(血清リン値の中央値,2.0 mg/dL [0.6 mmol/L];通常値>2.5 mg/dL [0.8 mmol/L])は,リン正常値群の患者(中央値 3.2 mg/dL [1.0 mmol/L])と比較して,副甲状腺ホルモン濃度が上昇しており,血清カルシウム値が低値~正常で,より若年であり,より高用量のイマチニブ投与を受けていた.両群とも尿中に排泄されるリン値が高く,オステオカルシンおよびコラーゲン架橋 N-テロペプチドの血清濃度が顕著に低下していた.
骨代謝およびミネラル代謝の変化を伴う低リン血症は,慢性骨髄性白血病や消化管間質腫瘍のためにイマチニブを服用している患者の一部に発現する.メシル酸イマチニブは,血清リン値が正常な患者においても,骨リモデリング(形成および吸収)を阻害する可能性がある.