腎移植の長期成績にドナーの C3 アロタイプが及ぼす影響
Influence of Donor C3 Allotype on Late Renal-Transplantation Outcome
K.M. Brown and Others
補体系は,自然免疫応答と獲得免疫応答の両方できわめて重要な役割を果している.ヒトでは,C3 にF(fast)と S(slow)という主な 2 つのアロタイプが存在し,炎症性疾患の発生率に影響を及ぼすことが知られている.われわれは,これらの対立遺伝子が腎移植の長期成績に及ぼす影響を調査するための研究を実施した.
1993~2002 年の成人腎ドナーとレシピエント 662 組の C3 アロタイプを決定し,C3F/S 多型状態を人口統計学的データならびに臨床転帰データと関連付けた.追跡期間の中央値は 3.3 年であった.
白人ドナーとレシピエント 513 組の解析から,C3S/F または C3F/F の腎臓の移植を受けた C3S/S レシピエント 113 例と,C3S/S の腎臓の移植を受けた C3S/S レシピエント 179 例を同定した.移植腎生着率は,ドナーのアロタイプが C3F/F,C3F/S のほうが,C3S/S よりも有意に高かった(P=0.05).C3S/S 腎の移植腎廃絶に関するハザード比は,C3F/F,C3F/S 腎と比較して 2.21(95%信頼区間 1.04~4.72,P=0.04)であった.移植腎機能は,C3F/F,C3F/S ドナー腎のほうが C3S/S ドナー腎よりも有意に優れていた(P<0.001).C3F 対立遺伝子の影響は,元来この対立遺伝子をもたないレシピエントに特異的なものであった.多変量解析から,移植腎の転帰に影響するとされている他の要因の影響は除外された.
ドナー腎細胞による C3 対立遺伝子の発現は,移植腎の長期成績に対し,対立遺伝子によって異なる影響をもつようである.白人の C3S/S レシピエントでは,C3F/F,C3F/S ドナー腎の移植は,C3S/S ドナー腎の移植よりも優れた長期成績と関連している.これらの知見は,この 2 つの対立遺伝子が機能的差異をもつことを示唆している.