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August 3, 2006 Vol. 355 No. 5

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インディアナ州における 2005 年の麻疹の集団発生が米国の麻疹根絶状態の維持に対してもつ意義
Implications of a 2005 Measles Outbreak in Indiana for Sustained Elimination of Measles in the United States

A.A. Parker and Others

背景

麻疹は,米国では 2000 年に根絶が宣言されたが,世界的にみると依然として流行している地域がある.2005 年,麻疹ワクチン未接種の 17 歳の少女が,麻疹の潜伏期にルーマニアから帰国し,1996 年以降米国で報告された中で最大規模の集団発生を引き起した.

方 法

症例集積研究,ウイルス分離株の分子タイピング,ワクチン接種率の調査,ワクチン接種に対する姿勢についての面接調査,および費用調査を実施した.

結 果

発端患者は,帰国翌日に約 500 人が出席する集会に参加した.麻疹に対する免疫の徴候がなかった約 50 例のうち,16 例(32%)がこの集会で麻疹に感染罹患した.集会から 6 週間のあいだに,計 34 例の麻疹が確認された.麻疹が確認された患者のうち,94%がワクチン未接種で,88%は 20 歳未満であり,9%が入院した.5~19 歳の患者 28 例のうち,71%は学校に登校しなかった.接種免疫不成立は 2 例で認められた.ウイルス株の遺伝子型は,ルーマニアで流行している D4 型であった.封じ込め措置は 20 例が感染してようやく開始されたが,麻疹は依然として,両親がワクチン接種を拒否した小児にほぼ限られていた.接種拒否の理由は,主にワクチンの有害事象に対する懸念であった.患者の 71%は 4 世帯に属していた.インディアナ州の麻疹ワクチン接種率は,未就学児で 92%,6 年生の児童で 98%であった.麻疹を封じ込めるためにかかった費用は少なくとも推定で 167,685 ドルであり,このうち,職員が感染した病院での推定費用は 113,647 ドルであった.

結 論

この集団発生は,ワクチンの安全性に対する懸念から,両親がワクチン接種を受けさせることを拒否した小児の集団に麻疹がもち込まれたことによって起った.周辺地域社会のワクチン接種水準が高く,接種免疫不成立の割合が低かったため,流行を防ぐことができた.今後の集団発生を防ぎ,米国における麻疹の根絶を維持するためには,ワクチン接種を拒否する人々への情報伝達方法を改善するなどして,ワクチン接種率を高い状態に保つ必要がある.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2006; 355 : 447 - 55. )