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February 8, 2007 Vol. 356 No. 6

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宗教と良心,および意見の分かれる臨床診療
Religion, Conscience, and Controversial Clinical Practices

F.A. Curlin and Others

背景

医療従事者が,自身の道徳上の理由から異議を唱えている治療行為を拒否できるかどうかについては,激しい議論がある.臨床診療においてそのような対立が起った場合に,医師が自身の倫理的権利や社会的責任についてどのように考えているかを理解することは重要である.

方 法

米国において,すべての専門領域の医師 2,000 人から成る層別化無作為標本を用い,郵送による横断的調査を実施した.主要基準変数は,合法ではあるが医師が自身の宗教上あるいは道徳上の理由から異議を唱えている医療処置を患者が求めた場合の,医師の倫理的権利および社会的責任に関する意見とした.これらの処置には,終末期患者に対するセデーションの実施,避妊失敗に対する中絶手術,保護者の同意を得ないで青少年へ避妊薬を処方することが含まれていた.

結 果

医師 1,820 人のうち,計 1,144 人(63%)が調査に回答した.調査結果から,大部分の医師(63%)が,患者に自身の道徳的反対を説明することは倫理的に認められると考えていることが推定された.また,大部分の医師が,医師はすべての選択肢を提示し(86%),患者の希望する処置に反対しないほかの医師を患者に紹介する(71%)義務があると考えていた.男性医師,信仰心の厚い医師,道徳的に意見の分かれる臨床診療に関して個人的に異議を唱えている医師は,そのような医療処置に関して情報を開示したり,そうした処置を受けられるよう患者をほかに紹介したりすべきであると回答する頻度が低かった(多変量オッズ比 0.3~0.5).

結 論

医師の中には,合法ではあるが道徳的に意見の分かれる医療処置に関して情報を開示したり,患者をほかに紹介する義務があるとは考えていない医師も多かった.そのような処置の情報や利用を望む患者は,受診している医師がそのような依頼に応じるか否かについて,前もって尋ねる必要があるかもしれない.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2007; 356 : 593 - 600. )