BRCA1 と BRCA2 の変異保有者における 乳癌の臨床転帰
Clinical Outcomes of Breast Cancer in Carriers of BRCA1 and BRCA2 Mutations
G. Rennert and Others
BRCA1 の変異を有する女性の乳癌の特徴から,遺伝性乳癌の転帰不良が示唆される.BRCA1 または BRCA2 の変異が乳癌の予後に及ぼす影響を検討するために,イスラエル人女性を対象とした全国規模の住民ベース研究を行った.
1987 年 1 月 1 日~1988 年 12 月 31 日に浸潤性乳癌の診断を受け,イスラエル全国癌登録(Israel National Cancer Registry)に登録された全症例に関するデータを入手した.これらの症例について,腫瘍組織のパラフィン包埋ブロックまたは未染色スライドと,病理記録および臨床記録を請求した.BRCA1 と BRCA2 の創始者変異(founder mutation)3 種類に関して,腫瘍検体から抽出した DNA を解析した.各対象者について,入手できた病理記録と腫瘍関連の記録を検討した.
対象者 2,514 例中 1,794 例(71%)の病理標本を入手することができ,これらのうち 1,545 例(86%)の医療記録が得られた.アシュケナージ系ユダヤ人家系の女性の 10%で,BRCA1 または BRCA2 の変異が確認された.乳癌死亡の補正ハザード比には,変異保有者と非保有者のあいだで有意差は認められなかった(BRCA1 保有者のハザード比 0.76,95%信頼区間 [CI] 0.45~1.30,P=0.31;BRCA2 保有者のハザード比 1.31,95% CI 0.80~2.15,P=0.28).化学療法を受けた女性では,BRCA1 保有者の死亡のハザード比は 0.48 であった(95% CI 0.19~1.21,P=0.12).
イスラエル人女性における乳癌特異的死亡率は,BRCA 創始者変異の保有者と非保有者で同等であった.