米国における卵細胞質内精子注入法の利用動向
Trends in the Use of Intracytoplasmic Sperm Injection in the United States
T. Jain and R.S. Gupta
卵細胞質内精子注入法(ICSI)は,当初,男性因子による不妊症の治療のための体外受精(IVF)の一環として開発された.しかし,追加費用や不確かな効果,潜在的リスクにもかかわらず,ICSI は,男性因子による不妊症であることが確認されていない患者にまで利用が拡大している.
米国での ICSI と IVF の利用の経時的動向を明らかにするため,米国疾病対策予防センター(CDC)に報告された生殖補助医療技術に関する全米データを解析し,保険の適用が義務付けられている州といない州における ICSI 利用の違いを検討した.
1995~2004 年に,不妊治療施設数,新鮮胚の周期数,および IVF に関連した妊娠や生児出生の割合は増加した.ICSI を利用した IVF 周期の割合も著しく増加したが(11.0%から 57.5%へ),男性因子に起因する不妊症と診断された割合には変化がなかった.男性因子による不妊症の診断に対する ICSI 手技の比は毎年着実に増加し,男性因子による不妊症以外への ICSI の利用が増加していることを示唆している.1999~2004 年に,保険適用が義務付けられている州といない州で,男性因子による不妊症患者の割合と比べ ICSI の利用が増加した.しかし,いずれの年も,保険適用が義務付けられている州では,義務付けられていない州と比較して,男性因子による不妊症の診断に対する ICSI 利用の比が高かった(P<0.001).
1995 年以降,米国における ICSI の利用は著しく増加しているが,一方で,男性因子による不妊症の治療を受けている患者の比率は一定したままである.IVF に対して州が保険適用を義務付けている場合,それに関連して男性因子に起因しない不妊症に対する ICSI の利用が増加する.