急性 B 型大動脈解離においては，偽腔が開存しているか血栓化しているかどうかが転帰を予測することが明らかにされている．偽腔の部分的血栓化についての予後的意義は解明されていない．

1996～2003 年に大動脈解離国際登録（International Registry of Acute Aortic Dissection）に登録され，生存して退院した B 型大動脈解離患者 201 例について検討した．Kaplan―Meier 死亡率曲線を，指標となる入院期間中に判定された偽腔の状態（開存，部分的血栓化，完全血栓化）で層別化して作成した．Cox 比例ハザード解析を行い，死亡の独立した予測因子を特定した．

指標となる入院期間中に，偽腔開存 114 例（56.7%），部分的血栓化 68 例（33.8%），完全血栓化 19 例（9.5%）が確認された．3 年死亡率の平均（±SD）は，偽腔開存例では 13.7±7.1%，部分的血栓化例では 31.6±12.4%，完全血栓化例では 22.6±22.6%であった（追跡期間中央値 2.8 年，log-rank 検定による P＝0.003）．退院後死亡の独立した予測因子は，偽腔の部分的血栓化（相対リスク 2.69，95%信頼区間 [CI] 1.45～4.98，P＝0.002），大動脈瘤の既往（相対リスク 2.05，CI 1.07～3.93，P＝0.03），アテローム性動脈硬化症の既往（相対リスク 1.87，CI 1.01～3.47，P＝0.05）であった．

急性 B 型大動脈解離患者では，退院後の死亡率が高い．この疾患の患者において，偽腔の部分的血栓化は，完全開存と比較して，退院後死亡の重要な独立した予測因子である．