April 17, 2008 Vol. 358 No. 16
CHI3L1 変異が血清 YKL-40 濃度,喘息リスク,肺機能に及ぼす影響
Effect of Variation in CHI3L1 on Serum YKL-40 Level, Risk of Asthma, and Lung Function
C. Ober and Others
キチナーゼ様蛋白質 YKL-40 は,炎症と組織リモデリングに関与している.われわれは最近,喘息患者では血清 YKL-40 濃度が上昇していること,またこの濃度は重症度,上皮下基底膜層の肥厚,肺機能に関連していることを示した.われわれは,YKL-40 濃度に影響を及ぼす一塩基多型(SNP)もまた,喘息と肺機能に影響を及ぼすという仮説を立てた.
フッター派から成るヨーロッパ系の創始者集団で血清 YKL-40 濃度のゲノムワイド関連研究を実施し,関連の示唆される SNP と喘息・肺機能との関連を検討した.また,YKL-40 濃度を出生時から 5 歳まで測定した喘息リスクの高い出生コホートと,2 つの無関係なヨーロッパ系の喘息の症例・対照集団において,関連する 1 つの変異体の遺伝子型を決定した.
CHI3L1 のプロモーター SNP(-131C→G)は YKL-40 をコードするキチナーゼ 3 様 1 遺伝子であり,この SNP はフッター派集団において血清 YKL-40 濃度の上昇(P=1.1×10-13),喘息(P=0.047),気道過敏性(P=0.002),肺機能の各測定値(P=0.046~0.002)と関連していた.この SNP は,2 つの症例・対照集団における喘息の有無(2 つを合わせた P=1.2×10-5)と,出生コホートにおける出生時(臍帯血検体)から 5 歳までの血清 YKL-40 濃度(P=8.9×10-3~2.5×10-4)の予測に用いることができた.
CHI3L1 は,喘息,気道過敏性,肺機能低下の感受性遺伝子であり,循環血中の YKL-40 濃度の上昇は,喘息と肺機能低下のバイオマーカーである.
本論文(10.1056/NEJMoa0708801)は,2008 年 4 月 9 日に www.nejm.org で発表された.