2 型糖尿病患者における強化血糖コントロールと血管系転帰の関連
Intensive Blood Glucose Control and Vascular Outcomes in Patients with Type 2 Diabetes
The ADVANCE Collaborative Group
2 型糖尿病患者において,強化血糖コントロールが血管系の転帰に及ぼす作用は依然として不明である.
2 型糖尿病患者 11,140 例を,標準的な血糖コントロールを受ける群と強化血糖コントロールを受ける群のいずれかに無作為に割り付けた.強化血糖コントロール療法は,糖化ヘモグロビン値が 6.5%以下になるように,グリクラジド(放出調節製剤)と必要に応じてその他の薬剤を投与するものとした.主要エンドポイントは,主要大血管イベント(心血管系の原因による死亡,非致死的心筋梗塞,非致死的脳卒中)と主要細小血管イベント(腎症,網膜症の発現・悪化)の複合とし,両イベントの合同評価と個別評価を行った.
中央値 5 年の追跡調査後の糖化ヘモグロビンの平均値は,強化コントロール群(6.5%)のほうが標準コントロール群(7.3%)よりも低かった.強化コントロールにより,主要大血管イベントと主要細小血管イベントの複合発生率が低下した(18.1%,これに対し標準コントロール群 20.0%;ハザード比 0.90;95%信頼区間 [CI] 0.82~0.98;P=0.01).同様に,主要細小血管イベントの発生率も低下した(9.4% 対 10.9%,ハザード比 0.86,95% CI 0.77~0.97,P=0.01).この低下は主に腎症の発生率が低下したことによるものであり(4.1% 対 5.2%,ハザード比 0.79,95% CI 0.66~0.93,P=0.006),網膜症に対しては有意な効果はみられなかった(P=0.50).主要大血管イベント(強化コントロール群のハザード比 0.94,95% CI 0.84~1.06,P=0.32),心血管系の原因による死亡(強化コントロール群のハザード比 0.88,95% CI 0.74~1.04,P=0.12),全死因死亡(強化コントロール群のハザード比 0.93,95% CI 0.83~1.06,P=0.28)に対しては,血糖コントロールの違いによる有意な影響はみられなかった.重症の低血糖はまれであったが,発生率は強化コントロール群のほうが高かった(2.7%,これに対し標準コントロール群 1.5%;ハザード比 1.86;95% CI 1.42~2.40;P<0.001).
グリクラジド(放出調節製剤)と必要に応じてその他の薬剤を投与する強化血糖コントロールにより,糖化ヘモグロビン値は 6.5%に低下し,主要大血管イベントと主要細小血管イベントの複合転帰に 10%の相対的低下がみられた.複合転帰の相対的な低下は主に,腎症が相対的に 21%低下したことに起因するものであった.(ClinicalTrials.gov 番号:NCT00145925)
本論文(10.1056/NEJMoa0802987)は,2008 年 6 月 6 日に www.nejm.org で発表された.