細胞培養由来 H5N1 型全ウイルスワクチンの臨床試験
A Clinical Trial of a Whole-Virus H5N1 Vaccine Derived from Cell Culture
H.J. Ehrlich and Others
鳥類でトリインフルエンザ H5N1 型ウイルスへの感染が広範囲でみられ,ヒトに一部伝播していることから,このウイルスがヒトインフルエンザパンデミックを引き起こす可能性があることが示唆されている.さまざまな H5N1 型ウイルス株に有効な H5N1 型ワクチンが,緊急に必要である.
6 つのサブグループを対象とした無作為化用量漸増第 1 相・第 2 相試験で,ベロ細胞培養により作製した H5N1 型全ウイルスワクチンの安全性を検討し,さまざまな H5N1 株を中和する抗体の誘導能について調べた.21 日間隔の 2 回の来院で,18~45 歳のボランティア 275 人が,赤血球凝集素抗原 3.75 μg,7.5 μg,15 μg,30 μgとアルミニウムアジュバントを含むワクチン,または赤血球凝集素抗原 7.5 μg または 15 μg を含むアジュバントなしのワクチンの 2 回の投与を受けた.血清学的分析をベースラインおよび 21 日目,42 日目に行った.
ワクチンは,クレード 1(A/Vietnam/1203/2004)のウイルス株のほか,クレード 2,3 の株に対しても中和免疫応答を誘導した.アジュバントを用いても抗体反応は促進されなかった.ワクチン株に対する最大の応答は,赤血球凝集素抗原 7.5 μg または 15 μg を含むアジュバントなしの製剤で得られた.すべてのワクチン製剤でもっとも高頻度にみられた有害事象は,注射部位の軽度の疼痛(被験者の 9~27%)と頭痛(被験者の 6~31%)であった.
赤血球凝集素抗原 7.5 μg または 15 μg を含むアジュバントなしのワクチンを 2 回投与するレジメンは,被験者の高い割合で多様な H5N1 型ウイルス株に対する中和抗体を誘導した.このことから,このワクチンが有用な H5N1 型ワクチンである可能性が示唆される.(ClinicalTrials.gov 番号:NCT00349141)