October 16, 2008 Vol. 359 No. 16
新生児に対する 1 価経口ポリオワクチン 1 型
Monovalent Type 1 Oral Poliovirus Vaccine in Newborns
N. El-Sayed and Others
1988 年に,世界保健総会(World Health Assembly)は灰白髄炎(ポリオ)を根絶することを決議した.この目標に向けて大きな進歩があったものの,根絶できたかどうかははっきりしていない.2004 年,世界保健機関(WHO)は,免疫原性がさらに高いと考えられる 1 価の経口ポリオワクチン 1 型の開発を要請した.
エジプトで,新たに承認された 1 価経口ポリオワクチン 1 型と 3 価経口ポリオワクチンとで,免疫原性を比較する臨床試験を行った.被験児を,出生時に 1 価経口ポリオワクチン 1 型の単回投与を受ける群と,3 価経口ポリオワクチンの単回投与を受ける群に無作為に割り付けた.生後 30 日目に,全例に 1 価経口ポリオワクチン 1 型の追加投与(challenge dose)を 1 回行った.血清型 1 型のポリオウイルスの排出を 60 日目まで評価した.
計 530 例が登録され,うち 421 例が試験の条件を満たした.試験ワクチン投与後 30 日目におけるポリオウイルス 1 型に対するセロコンバージョン率は,1 価ワクチン群では 55.4%であったのに対し,3 価ワクチン群では 32.1%であった(P<0.001).母親由来の抗 1 型ポリオウイルス抗体の抗体価が高い(>64)被験児でセロコンバージョンが認められたのは,1 価ワクチン群では 46.0%であったのに対し,3 価ワクチン群では 21.3%であった(P<0.001).1 価ワクチン 1 型の追加投与後 7 日目にポリオウイルス 1 型を排出していた被験児の割合は,1 価ワクチン群のほうが 3 価ワクチン群よりも有意に低かった(25.9% 対 41.5%,P=0.001).報告された重篤な有害事象に試験の介入に起因するものはなかった.
1 価経口ポリオワクチン 1 型を出生時に投与した場合,3 価経口ポリオワクチンと比べて,ポリオウイルス 1 型に対する液性抗体の誘導,もともと存在する母親由来の高い抗体価の克服,追加投与後のポリオウイルス 1 型排出の抑制向上の点で優れている.(Current Controlled Trials 番号:ISRCTN76316509)