November 20, 2008 Vol. 359 No. 21
臨床的危険因子,DNA 変異,そして 2 型糖尿病の発症
Clinical Risk Factors, DNA Variants, and the Development of Type 2 Diabetes
V. Lyssenko and Others
2 型糖尿病は,環境要因と遺伝要因の相互作用により発症すると考えられている.われわれは 2 つの前向きコホートを対象として,臨床的要因,遺伝要因,またはその両方により,糖尿病への進行を予測できるかどうかを検討した.
スウェーデン人 16,061 例とフィンランド人 2,770 例を対象に,16 個の一塩基多型(SNP)の遺伝子型を決定し,臨床的要因を検討した.中央値 23.5 年の追跡期間中に,これらの対象者のうち 2,201 例(11.7%)が 2 型糖尿病を発症した.また,遺伝子変異がインスリンの分泌と作用の経時的な変化に及ぼす影響についても検討した.
糖尿病の強い予測因子は,糖尿病の家族歴,体格指数(BMI)の高値,肝酵素値の上昇,現在の喫煙状況,インスリンの分泌と作用の指標の低下であった.11 個の遺伝子(TCF7L2,PPARG,FTO,KCNJ11,NOTCH2,WFS1,CDKAL1,IGF2BP2,SLC30A8,JAZF1,HHEX)の変異が,臨床的危険因子とは独立して 2 型糖尿病のリスクと有意に関連しており,これらのうち 8 個の変異は β 細胞の機能障害と関連していた.臨床的要因に加えて特定の遺伝情報を用いることにより,将来の糖尿病発症の予測がわずかに改善し,受信者動作特性(ROC)曲線下面積が 0.74 から 0.75 に増加した.この増加の程度は,わずかではあるが有意であった(P=1.0×10-4).追跡期間が長くなるにつれて,遺伝的危険因子の識別能は向上したが,臨床的危険因子の識別能は低下した.
臨床的危険因子のみを用いた場合に比べ,糖尿病のリスクと関連する一般的な遺伝子変異を用いることで,将来の 2 型糖尿病発症の予測能にわずかな効果がみられた.追跡期間が長くなるほど,遺伝要因による予測能は高くなった.