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August 21, 2008 Vol. 359 No. 8

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米国における HPV ワクチン接種による健康上・経済上の影響
Health and Economic Implications of HPV Vaccination in the United States

J.J. Kim and S.J. Goldie

背景

ヒトパピローマウイルス 16 型(HPV-16)と 18 型(HPV-18)に対するワクチン予防接種の費用対効果は,米国の予防接種ガイドラインにおいて検討すべき重要事項である.

方 法

HPV-16 と HPV-18 の伝播と子宮頸癌発癌に関するモデルを用いて,疫学データと人口統計学的データを統合し,思春期前の女児に対するワクチン接種(12 歳時)と,キャッチアッププログラムにおけるより年長の女性に対するワクチン接種(18 歳,21 歳,26 歳の各年齢時まで)とで,健康上・経済上の転帰を比較した.次の項目について検討した;HPV-16 と HPV-18 に関連するほかの癌の予防における健康上の利益,4 価ワクチンを用いた HPV-6 と HPV-11 に関連する陰部疣贅ならびに若年性再発呼吸器乳頭腫症の予防,免疫期間,将来的なスクリーニングの実施.

結 果

ワクチンが生涯にわたって免疫を与えると仮定すると,12 歳の女児に対するワクチン接種の費用対効果は,現行のスクリーニングと比較して,質調整生存年(quality-adjusted life-year:QALY)あたり 43,600 ドルになった.ベースラインの仮定のもとでは,現行のキャッチアッププログラムを 18 歳まで延長することの費用対効果は,QALY あたり 97,300 ドルになった.ワクチン接種を 21 歳まで延長した場合の費用は QALY あたり 120,400 ドル,26 歳まで延長した場合の費用は QALY あたり 152,700 ドルになった.これらの結果は,ワクチンによる免疫期間の影響を受け,免疫が 10 年後に減弱した場合には思春期前の女児に対するワクチン接種費用は QALY あたり 140,000 ドルを超え,キャッチアップ戦略では,スクリーニング単独よりも費用対効果が低くなった.ワクチン接種戦略の費用対効果が優れていたのは,ほかの病態を防ぐ利益が含まれている場合や,スクリーニングの時期がより遅く,より狭い間隔で実施され,そしてより高感度の検査で実施される場合であった.費用対効果が低かったのは,ワクチン接種を受けた女児が成人期により高頻度で優先的にスクリーニングを受けた場合であった.

結 論

HPV ワクチン接種の費用対効果は,ワクチンによる免疫期間に左右されるようである.思春期前の女児に対する接種を広く行い,最初のキャッチアップの取組み対象を 18 歳あるいは 21 歳までの女性とし,スクリーニング方針を見直すことによって,費用対効果は最適化されるであろう.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2008; 359 : 821 - 32. )