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日本語アブストラクト

August 28, 2008 Vol. 359 No. 9

WAGR 症候群における脳由来神経栄養因子と肥満
Brain-Derived Neurotrophic Factor and Obesity in the WAGR Syndrome

J.C. Han and Others

背景

脳由来神経栄養因子(brain-derived neurotrophic factor:BDNF)は,動物モデルでのエネルギーホメオスタシスに重要であることが示されているが,ヒトでのエネルギーバランスにおける役割についてはほとんど明らかにされていない.染色体 11p13 上にある遺伝子 WT1PAX6BDNF [11p14.1] の約 4 Mb ほどセントロメア寄りに位置)の,ヘテロ接合性でサイズの異なる隣接遺伝子の欠失は,ハプロ不全を引き起こし,ウィルムス腫瘍・無虹彩症・泌尿生殖器奇形・精神発達遅滞(Wilms' tumor, aniridia, genitourinary anomalies, and mental retardation:WAGR)症候群をもたらす.WAGR 症候群患者のサブグループでは過食症と肥満が観察されていることから,われわれは,WAGR 症候群における 1 つの表現型である肥満は,BDNF のハプロ不全を引き起こす欠失に起因すると仮定した.

方 法

国際 WAGR 症候群協会(International WAGR Syndrome Association)を介して募集した WAGR 症候群患者 33 例を対象に,遺伝子型と BMI の関連を検討した.各欠失の程度は,オリゴヌクレオチド比較ゲノムハイブリダイゼーション法を用いて決定した.

結 果

対象患者での染色体 11p の欠失は,1.0 Mb から 26.5 Mb に及んだ.患者の 58%はヘテロ接合性の BDNF 欠失であった.これらの患者では,完全な BDNF を有する患者よりも,BMI z スコアが小児期を通して有意に高かった(8~10 歳の時点での平均 [±SD] z スコアは,ヘテロ接合性 BDNF 欠失患者で 2.08±0.45 であったのに対し,BDNF 欠失のない患者では 0.88±1.28,P=0.03).10 歳までに肥満(BMI が年齢別・性別 95 パーセンタイル以上)が認められたのは,ヘテロ接合性 BDNF 欠失患者で 100%(95%信頼区間 [CI] 77~100)であったのに対し,BDNF 欠失のない患者では 20%(95% CI 3~56)であった(P<0.001).WAGR 症候群における小児期発症の肥満の決定的領域は,BDNF 遺伝子のエクソン 1 の 80 kb 内に位置していた.血清 BDNF 濃度は,ヘテロ接合性 BDNF 欠失患者で約 50%低かった(P=0.001).

結 論

WAGR 症候群患者において,BDNF ハプロ不全は,血清 BDNF 濃度の低下および小児期発症の肥満と関連している.したがって,BDNF は,ヒトにおけるエネルギーホメオスタシスに重要である可能性がある.(ClinicalTrials.gov 番号:NCT00006073)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2008; 359 : 918 - 27. )