死亡前の 1 年間における障害の経過
Trajectories of Disability in the Last Year of Life
T.M. Gill and Others
高齢者の機能状態は本人およびその家族にとって重要であるにもかかわらず,終末期における障害の経過についてはほとんど知られていない.
地域在住の高齢者 754 例を対象とした縦断研究から得た,死亡者 383 例のデータを評価した.ベースラインで基本的な日常生活動作に障害のある被験者はいなかった.障害の程度は毎月の問診で 10 年以上にわたり確認した.死にいたった病態に関する情報は,死亡診断書と,ベースラインの評価後 18 ヵ月間隔で実施した包括的評価から得た.
死亡前の 1 年間において,障害なしからもっとも重度の障害まで,5 つの経過を同定した.内訳は,障害なしが 65 例(17.0%),死亡直前の急激な障害が 76 例(19.8%),加速的に進行する障害が 67 例(17.5%),徐々に進行する障害が 91 例(23.8%),持続的な重度の障害が 84 例(21.9%)であった.死にいたった病態は虚弱(107 例 [27.9%])がもっとも多く,臓器不全(82 例 [21.4%]),癌(74 例 [19.3%]),その他(57 例 [14.9%]),進行性認知症(53 例 [13.8%]),突然死(10 例 [2.6%])と続いた.死にいたった病態ごとに評価すると,1 つの障害の経過が大半を占めていたのは,進行性認知症による死亡例(67.9%が持続する重度の障害)と突然死による死亡例(50.0%が障害なし)のみであった.その他の 4 つの死にいたった病態では,いずれの障害の経過も 34%以下であった.障害の経過の分布は,臓器不全による死亡例(特定の経過をたどった例は 12.2~32.9%)と虚弱による死亡例(特定の経過をたどった例は 14.0~27.1%)でとくにばらつきが大きかった.
死亡例のほとんどにおいて,死亡前 1 年間における障害の経過は,死にいたった病態から予測できるパターンをたどらなかった.