シャルコー–マリー–トゥース病患者における全ゲノム配列決定
Whole-Genome Sequencing in a Patient with Charcot–Marie–Tooth Neuropathy
J.R. Lupski and Others
全ゲノム配列決定は,疾患の原因となる対立遺伝子を迅速に同定して医学診断を変革する可能性がある.しかし,遺伝様式が単純で診断が明確な症例でも,疾患の表現型と対応する遺伝子変異の関係は複雑な場合がある.このため,包括的な診断により,各ハプロタイプにおいて可能性のあるあらゆる DNA 変異を同定し,疾患の責任遺伝子変異を決定しなければならないが,すべてのヒトがまれで不均一な変異を多数有しており,アノテーションされた遺伝子の 90%以上では機能的変異があまり解明されていないためきわめてむずかしい.このように,全ゲノム配列決定によって遺伝性疾患の分子機序を明らかにするのは,依然として困難なのである.われわれは,シャルコー–マリー–トゥース病患者の遺伝子診断におけるヒト全ゲノム配列決定の有用性を評価した.
遺伝的基盤が明らかにされていない劣性遺伝型のシャルコー–マリー–トゥース病の 1 家族を同定した.発端者の全ゲノム配列を決定し,この疾患に関連する可能性のある遺伝子の機能的変異をすべて同定し,その罹患家族においてこれらの変異の遺伝子型決定を行った.
シャルコー–マリー–トゥース病の発端者とその罹患家族において,2 つの突然変異を有する SH3TC2(SH3 ドメイン・テトラトリコペプチド反復配列 2 遺伝子)の複合ヘテロ接合原因対立遺伝子を同定し,妥当性を検証した.この 2 つの変異それぞれから,異なる潜在的表現型が独立に分離発見された.ヘテロ接合突然変異は,手根管症候群などの神経障害への感受性を付与する可能性が示された.
シャルコー–マリー–トゥース病の 1 家族を対象とした今回の研究から,全ゲノム配列決定によって臨床的に重要な突然変異を同定することができ,また,治療の基礎となる診断情報が得られることが示された.