January 14, 2010 Vol. 362 No. 2
膵頭部癌に対する術前胆道ドレナージ
Preoperative Biliary Drainage for Cancer of the Head of the Pancreas
N.A. van der Gaag and Others
膵頭部癌による閉塞性黄疸を伴う患者に対する術前胆道ドレナージは,術後の転帰を改善する目的で導入されたが,その有益性は明らかにされていない.
多施設共同無作為化試験において,膵頭部癌の患者を対象に,術前に胆道ドレナージを行った場合と手術のみを行った場合を比較した.閉塞性黄疸を伴い,ビリルビン値が 40~250 μmol/L(2.3~14.6 mg/dL)の患者を,診断後 4~6 週間胆道ドレナージを行ってから手術する群と,診断後 1 週間以内に手術のみを行う群に無作為に割り付けた.術前胆道ドレナージは,主に内視鏡的逆行性胆道膵管造影法を用いた内瘻の造設により試みた.主要転帰は,無作為化後 120 日以内の重篤な合併症の発生率とした.
202 例の患者を登録し,96 例を早期の手術に,106 例を術前胆道ドレナージに割り付けた.6 例を解析から除外した.重篤な合併症の発生率は早期手術群 39%(37 例),術前胆道ドレナージ群 74%(75 例)であった(早期手術群の相対リスク 0.54,95%信頼区間 [CI] 0.41~0.71,P<0.001).術前胆道ドレナージは,96 例(94%)で試行 2 回目までに成功し,47 例(46%)に合併症が認められた.手術関連合併症は,早期手術群の 35 例(37%),術前胆道ドレナージ群の 48 例(47%)で発生した(相対リスク 0.79,95% CI 0.57~1.11,P=0.14).死亡率,入院期間について両群間に有意差はなかった.
膵頭部癌の手術を受ける患者に対し,術前胆道ドレナージをルーチンに行うことは,合併症のリスクを上昇させる.(Current Controlled Trials 番号:ISRCTN31939699)